免疫ヘルパーT細胞(Th)は、外部刺激に応じて機能の異なるエフェクター細胞(Th1、Th2、Th17)に分化し、免疫応答の司令塔として中心的な役割を果たしている。この分化制御の破綻によりアレルギーや自己免疫を発症することから、本研究ではTh分化に関わるエピジェネティクスのうち、特に、高次クロマチン構造による分化制御機能の解明を目指した。これまでの解析から、Th1細胞の分化促進に関わるサイトカインであるインターフェロンガンマ(IFNG)遺伝子の発現調節に、ゲノム非コード上のCTCFタンパク質結合型インスレーター配列が必須であることを明らかにした。すなわち、IFNG遺伝子座の3つのインスレーターは、CTCFの結合を介したDNAループによる相互作用により高次クロマチン構造を形成し、IFNG遺伝子発現を正に調節していた。 そこで、本研究ではCTCFインスレーター欠損マウスを作製を試みた。申請者が同定した3つインスレーターのうち、まず、IFNG遺伝子上流70kbに位置するインスレーターを条件欠損できるES細胞を3クローン作製した。そして、それぞれのES細胞由来のキメラマウスの作出に成功した。これらのマウスを用いたPCR法とゲノムサザンブロット法により、遺伝子操作した染色体DNAの生殖系列への導入が確認できた。現在、Th細胞特異的にインスレーターを欠損できるホモ欠損マウスの作製を進めている。得られるホモ欠損マウスを用いて、表現型および免疫応答に対する解析を進めることで、IFNG遺伝子座の高次クロマチン構造によるTh1分化制御機構の解明と、免疫機能に果たす役割の解明を目指す。
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