研究課題/領域番号 |
23590563
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西尾 純子 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (40598679)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / 制御性T細胞 / Helios |
研究概要 |
本研究の目的は、腸内細菌の定着により大腸粘膜特異的に出現するHelios陰性のTreg細胞(H-Treg)の、分化と特徴・機能の解明である。平成23年度の計画では、1) 大腸粘膜のナイーブT細胞とTreg細胞を単一細胞レベルで採取しT細胞レセプター(T cell receptor ; TCR)のシークエンスを比較することにより、H-Treg の分化を検討する、2) Helios陰性Treg細胞(H-Treg)を解析するため、Heliosレポーターマウスを作製する、3) H-Tregを誘導するクロストリジウム菌定着による自己免疫性疾患への影響を見る、であった。1)については、脾臓から採取した単一リンパ球から少なくとも4遺伝子の増幅に成功し、効率的なsingle cell PCRの系を立ち上げた。少数細胞の解析でTCRレパトワの相同性を判断可能にするため、TCRレパトワが限られた"Limitedマウス"を入手し繁殖させた。しかし、意外にもこのマウスは、H-Treg欠損マウスであることが判明し、実験には使用できなかった。そこで、現在、TCRレパトワの限られた別のマウスの作製を試みている。興味深いことにこのH-Treg欠損マウスは腸炎をきたし、H-Tregの生理的状況下での機能解析に格好のマウスであることから、本研究はこのLimitedマウスを中心に用いた研究にも発展している。2)Heliosレポーターマウスについては、コンストラクト作製まで行ったが、採取した単一細胞から4つ以上の遺伝子の増幅が可能であることを1)で確認し、Helios陽性と陰性のTreg細胞は、RT-PCRにより分別可能であり、レポーターマウス作製は中止した。3)については、I型糖尿病マウスを無菌群とクトストリジウム定着群に分け、30週齢まで糖尿病発症および膵島炎に、2群間の差は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)のTreg細胞を単一細胞レベルで採取しT細胞レセプター(T cell receptor ; TCR)のシークエンスを比較することにより、Helios 陰性Treg細胞 (H-Treg) の分化を検討することに関しては、single cell PCRの系が確立し、あとはFoxp3-GFPマウスと掛け合わせたマウスが出来上がっているのを待つだけでる。2)の H-Tregを解析するため、Heliosレポーターマウスを作製は中止となったが、sigle cell PCRで決着がつくことが判明したことにより、H-Tregの分離は可能になったし、H-Tregの欠損マウスを発見したため、この細胞の機能解析はこのマウスの解析により達成されると考えられる。3) のを誘導するクロストリジウム菌定着による自己免疫性疾患への影響を見ることについては、I型糖尿病での評価が終了し、クロストリジウム菌定着は糖尿病の病態には影響しないことが結論付けられた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の計画は、1)ヘリオス陰性Treg細胞(H-Treg)の特性の解析、2)腸管粘膜に存在する樹状細胞の提示抗原の同定を主なものとしている。1)には、研究実績の概要で述べたように、H-Treg欠損マウスの解析を行うことにより、H-Tregの特性を解析する。このマウスは腸炎をきたすため、どのような腸炎をきたしているかを、腸炎の経過、病理組織、粘膜浸潤細胞のFACS解析や、quantitative PCRにて炎症性サイトカインの発現を定量する。その結果により、また、H-Tregが欠損することにより、どのように腸管粘膜の恒常性が崩れるかを解明していく。2)の樹状細胞の提示抗原の同定には、質量解析が必要となり、実験のセットアップにはその分野の提携研究者の意見も参考にしながら進めていく。また、一方で抗原ペプチドを抽出する対象となる樹状細胞の細胞集団についても、FACSなどで解析し、決定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
以上から、平成24年度の研究推進方策に準じて、解析用マウスの維持費、各解析用のための試薬費、single cell sorting のための、セルソーター使用量、質量解析受託解析のための費用が主な支出となる。
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