研究課題/領域番号 |
23590564
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高村 祥子(赤司祥子) 東京大学, 医科学研究所, 助教 (00325599)
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キーワード | MD-1 / RP105 / 脂質レセプター |
研究概要 |
当研究課題での研究計画は以下の通りである。(1.脂質代謝・運搬に対するMD-1の役割 2.エンドトキシンショックにおけるMD-1の重要性 3.MD-1と自己免疫疾患との関連 4.脂質会合分子MD分子群の機能解析 5.脂質会合機能とTLR応答および抗体産生機能との関与) 本年度はこのうち主に計画1、3、5に関して中心に行った。 1.MD-1はMD-2と同様に脂質が入り込むポケットをもっており、電気泳動にて様々なリン脂質が入ることがわかった。MD-1のポケットにはもともとリン脂質がはいっており、元来RP105/MD-1が2つくっついたダイマーとなって存在していることが構造解析の論文報告で明らかにされている。RP105はTLR4とよく似た構造であるが細胞内ドメインをもたないため、シグナルを伝えるためのトランスデューサーを検索したところ、ある脂質レセプターがRP105/MD-1に会合していることがわかった。機能的な関係をさらに検索中である。 3.自己免疫疾患モデルマウスとMD-1ノックアウトマウスとをかけあわせたマウスをふやして、MD-1の存在が自己免疫疾患発症に与える影響を検討したところ、ワイルドタイプマウスをかけあわせた群に比べ増強し、リン脂質に対する抗体価も上昇した。以前の当教室での報告では、自己免疫疾患モデルマウスとMD-1が会合しているRP105ノックアウトマウスとを掛け合わせた群ではワイルドタイプマウスをかけあわせた群に比べむしろ改善を見ていたという、対照的な結果であった。このような対照的な結果の理由・メカニズムについて、1.の結果もあわせてさらに検討を進めていく。 5.数種類の脂質レセプターノックアウトマウスを入手することができた。TLR応答への影響について現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまではRP105分子のシグナルトランスデューサーを検索する目的で、その会合分子を免疫沈降法などで検索してくるという蛋白レベルの解析にとどまっていた。今回MD-1がリン脂質をポケットに内包しているという構造解析結果報告やMD-2がLPSと会合するという点に着目し、脂質会合分子としての機能という観点からあらためて検索してみることで、会合しうる脂質レセプターの発見につながった。このことをきっかけに、脂質認識と蛋白認識応答との関連のメカニズム、免疫機能における役割を解明できる可能性がでてきたことは今回大きな前進であると思われる。またこれまで作製しえた、MD-1やRP105に対する抗体なども解析の際に重要なツールとなっている。これらを用いて細胞レベル・個体レベルでの解析展開が期待されうる点も大きい。
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今後の研究の推進方策 |
脂質の機能解析に関してはノックアウトマウスの存在も含め日本は世界に先駆けて非常に進んでおり、多くの研究者との共同研究も行いやすい。この恵まれた状況を大いに利用し、RP105/MD-1と脂質・脂質レセプターとの関連について、蛋白解析・脂質解析両面から進めていく。個体レベルでのフェノタイプと細胞レベルでの機能解析とを融合して解析を進めていく予定である。またMD-1に会合する脂質の候補は多数あるので、他の脂質・脂質レセプターとMD-1との機能的な関係も明らかにしてゆく。抗体を用いた免疫沈降法によるレセプター同士の会合検討も指摘条件がわかってきたので、構造変化の観点からも着目して検討を進めてゆく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
会合分子がみつかったのでこの点に絞って、MD-1との関係を明らかにすべく機能解析をさらに進めていくと共に、最終年度でもあるためこれまでの成果をまとめ報告することに主眼をおく。現時点で必要であるのはマウス検体・細胞からMD-1を高濃度で抽出・精製する方法であり、まずはこの検討に使用する。また胎生致死のノックアウトマウスでのB細胞機能解析を可能にするために、Fetal Liver Transferを数回予定している。これには多くの継代マウスの維持・購入マウスの準備が必要であるため、このためにも資金を費やす予定である。
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