研究課題/領域番号 |
23590565
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
大洞 將嗣 東京医科歯科大学, 歯と骨のGCOE拠点, GCOE拠点形成特任教員 (40351506)
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キーワード | カルシウム / 制御性T細胞 / 樹状細胞 |
研究概要 |
本研究の目的は、制御性T細胞(Treg細胞)や樹状細胞(DC)におけるカルシウム流入―カルシウムシグナルの生理的な役割を、各細胞内レベルと細胞間レベルで解析し、カルシウムシグナルによる末梢自己免疫寛容の成立・維持の制御機構を解明することである。本年度は以下の解析を行った。 1. ストア作動性カルシウム流入によるTreg細胞の分化制御機構について解析した。本年度は、ストア作動性カルシウム流入が、胸腺内Treg細胞分化のどの段階に関与しているのかを調べた。その結果、Foxp3陰性CD25陽性のTreg前駆細胞は存在することから、Treg細胞としての選択は正常であること、Foxp3の発現は誘導されるが、その後のFoxp3とCD25の発現上昇が阻害されていた。さらに、IL-2を用いて、Foxp3陽性CD25陽性のSTIM欠損Treg細胞を作製したが、このSTIM欠損Treg細胞は抑制機能を有していなかった。したがって、ストア作動性カルシウム流入はTreg細胞の増殖や機能的な成熟過程に重要であることが明らかとなった。この成果は、論文としてImmunity誌に発表した(13.研究発表、Oh-hora et al.)。 2. Treg細胞とDCにおいて高発現している分子であるTbc1d4遺伝子のノックアウトマウスを作製した。その結果、ノックアウトマウスは正常に出生した。 3. 昨年度に作製したDC特異的なSTIM1とSTIM2の2重欠損マウスを用いて、樹状細胞におけるストア作動性カルシウム流入―カルシウムシグナルの生理的な役割の解析を進めた。カンジダ菌を用いて真菌感染に対する防御反応を調べたところ、STIM 欠損マウスは真菌に対する抵抗性が減弱していた。また、骨髄由来のSTIM欠損DCをザイモザンで刺激したところ、抗炎症生サイトカインであるIL-10の産生が増強されることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
制御性T細胞の分化におけるストア作動性カルシウム流入の役割を明らかにでき、論文として発表することができた。また、樹状細胞におけるストア作動性カルシウムが真菌感染の防御に関与するという予備データを得られたうえ、抗炎症性サイトカインであるIL-10の産生を抑制していることを示唆する予想外の結果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
樹状細胞におけるストア作動性カルシウム流入が、どのようにして真菌の感染防御を制御しているのかを明らかにする。さらに、ストア作動性カルシウム流入による樹状細胞におけるIL-10産生のメカニズムとその生理的な意義を明らかにする。また、自然発症するまで時間がかかることから、自然発症する皮膚炎と類似する実験モデル系を導入し、生体レベルでの解析を加速する。 新規分子Tbc1d4については、ノックアウトマウスを用いて、Treg細胞や樹状細胞の分化、免疫応答などの解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
マウスの個体維持に加え、サイトカインなどの細胞培養用の試薬の購入、シグナル伝達機構の解析用の試薬の購入にあてる。
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