研究課題/領域番号 |
23590566
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
谷口 俊一郎 信州大学, 医学系研究科, 教授 (60117166)
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研究分担者 |
肥田 重明 信州大学, 医学系研究科, 准教授 (10345762)
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キーワード | ASC / Inflammasome / innate immunity / cell death / cancer / fascin / IL-1beta / IFNbeta |
研究概要 |
感染、炎症、細胞死に関与するASCに注目し、Inflammasome形成におけるASC機能解析を行う一方、ASCの多面的生物機能としてDLD-1ヒト大腸がん細胞株、HT1080ヒト肉腫細胞がコンフルエント状態にあるときに細胞死を誘導すること、マウス悪性黒色腫の肺転移を抑制することを認めた。 作用機構を明らかにするためにASCと相互作用する分子を免疫沈降法、質量分析などによって検索し、10種類以上の候補蛋白質を同定したが、その中に細胞増殖への関与や蛋白質合成に関与する分子、細胞骨格分子などが含まれていた。このうち、RNAヘリカーゼDDXファミリー蛋白質はASCとの生理的条件下での相互作用とそれによる特異的機能が確認できなかった。一方、ASCと結合するアクチン結合蛋白質Fascin1のshRNAによるノックダウンあるいは過剰発現実験を数種類細胞を用いて、その生物的機能を検討した結果、1)THP-1細胞におけるInflammasome形成とIL-1beta産生を観察すると、Fascin1は正の機能を有していることが分かった。2)一方がん細胞においては、Fascin1はRig-1シグナルを介するIFNbeta産生を抑制しており、がんの進展において免疫監視機構からの回避に関与していることが示唆された。 一方、AhR欠損マウスでは盲腸に生後2か月ぐらいで炎症をともなう腫瘍が発生するが、ASCをこのマウスから欠損させると、局所での炎症が抑制され発がんは大幅に遅延した。この現象において、ASCの腸上皮での欠損あるいは免疫細胞での欠損のいずれに責任があるかは今後の課題である。以上のようにASCの機能は細胞種類、宿主レベルの反応に依存して多面的であり、それぞれの相互作用分子を同定することが今後も重要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的:ASCと結合する分子群を検索・同定し、その結果を基にinflammasome構成分子群と形機序の理解である。特ににASCと細胞骨格分子と相互作用する予備的結果を基に、そこに焦点を合わせて検討を行い,inflammasome制御異常が原因と考えられる種々の病態解明の糸口とする。 24年度に得られた成果:ASCと相互作用する分子を免疫沈降法、質量分析などによって検索し、10種類以上の候補蛋白質を同定したが、その中に細胞骨格分子の他、細胞増殖への関与や蛋白質合成に関与する分子などが含まれていた。このうち、RNAヘリカーゼDDXファミリー蛋白質はASCとの生理的条件下での相互作用とそれによる特異的機能が確認できなかった。一方、ASCと結合するアクチン結合蛋白質Fascin1のshRNAによるノックダウンあるいは過剰発現実験を数種類細胞を用いて、その生物的機能を検討した結果、1)THP-1細胞におけるInflammasome形成とIL-1beta産生を観察すると、Fascin1は正の機能を有していることが分かった。2)一方がん細胞においては、Fascin1はRig-1シグナルを介するIFNbeta産生を抑制しており、がんの進展において免疫監視機構からの回避に関与していることが示唆された。 自己点検と評価:目的と照らし、詳細なinfalmmasome制御機序の解明には至っていないが、他の分子との相互作用、そのinflammasome形成に及ぼす影響、ASCによる自然免疫系機能を介してのがんの悪性化への関与を示した点、目的を達成しつつあると評価したい。
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今後の研究の推進方策 |
1)ASCのさまざまな変異体を作成して、生物機能において重要な分子部位を決める。特にPYD領域の重要性を決定する。またPYD領域内の小ペプチドを用いて細胞形質への影響を解明したい。 2)Fascin1機能については論文化する。同時にASCのFascin1機能への影響を詳細に解明する。 3)ASCのコンフルエント期にあるがん細胞悪性形質抑制機序を解明し、あらたな分子標的探索を行う。 4)AhR欠損マウスでのASC欠損による大腸がん発生抑制の作用機序をがん細胞と宿主側と分けて解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画に基づき、ペプチド合成、遺伝子改変、細胞培養、動物実験と論文投稿のために用いる。 残金は当初計画で見込んだよりも安価に研究が進展したため、次年度使用額が生じた。
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