研究概要 |
腸管は食物由来の異物や腸内共生細菌に対しては積極的な免疫応答が働かないようにし、逆に不応答状態(経口免疫寛容)を作り出すからである。この経口免疫寛容は粘膜ワクチン開発の大きな障害であり、これを克服するためには有効な粘膜アジュバントが必要である。 本研究では、微生物由来免疫活性物質が作用する標的細胞を同定するとともに、微生物由来免疫活性物質によって誘導される体内のアラームシグナル分子を同定しさらにそのシグナル伝達機構を解明することを目的とした。 申請者等が独自に確立した酵素消化と多色フローサイトメトリーによる細胞分取法(Jang et al, J. Immunol., 76:803, 2006)を用いて、小腸粘膜固有層からCD11cを発現する抗原提示細胞を分取した後それらの粘膜固有層内の抗原提示細胞を、様々の微生物由来免疫活性物質を用いてin vivoおよびin vitroで刺激し、抗原提示細胞の数的変化、表面マーカーの変化およびサイトカイン産生能を解析した。小腸粘膜固有層にCD11c発現が異なる4種のユニークな細胞群の中でCD11chiCD11bhiCD103+DCが選択的に様々の微生物由来免疫活性物質に対して強い炎症反応性を見せた。RT-PCRとELISA解析の結果ら小腸粘膜固有層CD11chiCD11bhiCD103+DCはTLR2,TLR6,dectin-1を発現し、特にzymosanに対して大量のIL-6とIL-23を産生した。さらにzymosanに刺激されたCD11chiCD11bhiCD103+DCはTh17細胞の誘導に重要な役割を担っていることが明らかになった。脾臓CD11chi細胞はzymosanの刺激に対してIL-6とIL-23は産生せず大量のIL-12p40のみを産生し選択的にTh1細胞を誘導した。Zymosanの刺激に対して小腸粘膜固有層の細胞群は有効な粘膜アジュバントを妨害するIL-10は誘導しなっかた。 この結果はzymosanが新しい粘膜ワクチンアジュバントとしての可能性があり、粘膜を介した感染症の新しい予防法と治療法の開発が期待できるようになった。
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