研究課題/領域番号 |
23590573
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小林 隆志 慶應義塾大学, 医学部, 特任准教授 (30380520)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アレルギー / B細胞 / シグナル伝達 / 可視化 / IgE |
研究概要 |
本研究は、アレルギー感受性を規定するIgE産生B細胞の機能制御を担う分子機構とその細胞動態の解明を目的とする。 まず、機能制御の解析では、サイトカインシグナルの抑制因子であるSOCS1がB細胞で欠損するマウスはIgE産生が上昇することがわかった。そこで、このマウスのアレルギー感受性を検証した結果、皮膚アナフィラキシーモデル、気道炎症モデルおよび鼻炎モデル等でアレルギー感受性が亢進していることが示された。従って、B細胞内におけるSOCS1はアレルギー感受性を制御する重要なファクタ-であることが明らかになった。また、長期にわたる抗体産生を調べたところ、B細胞特異的SOCS1欠損マウスにおいて抗原特異的IgG1産生B細胞の割合が有意に増加していたが、それら細胞集団の中の胚中心B細胞とメモリーB細胞の割合には野生型マウスと大きな差は認められなかった。さらに、免疫して1年後に再免疫したときの抗原特異的IgG1の産生も野生型マウスと有意差はなかったことから、SOCS1欠損が抗原特異的IgG1型メモリーB細胞の分化・機能には影響しないことが明らかになった。また、同様の方法で抗原特異的IgE産生B細胞を調べたところ、長期にわたる抗原特異的IgE産生B細胞の有為な増加を認めたが、1年後に抗原再刺激した時のIgE上昇の割合は野生型マウスと差はなかった。以上の結果から、B細胞におけるSOCS1の欠損が長期的な抗原特異的IgE産生を促進することが示された。 一方、IgE産生B細胞の動態解析では、IgE産生B細胞可視化マウスの作製に着手した。IgE抗体へのクラススイッチがおきると蛍光・化学発光タンパク質が発現するDNAコンストラクトを構築し、ES細胞へ導入して目的の変異ES細胞を樹立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究により、B細胞におけるSOCS1がIgE抗体産生量を制御し、アレルギー感受性に重要な働きを担っていることが示された。アレルギー感受性を規定するIgE産生B細胞の機能制御を担う分子機構の一端が明らかになったのでおおむね順調に進展しているといえる。また、IgE産生B細胞の細胞動態を解明する研究については、それを解析するための新たなレポーターマウスの作製に着手し、変異ES細胞が樹立できたので、次年度以降のキメラマウスの作製につながったので順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度では、Cε遺伝子座の非翻訳領域にIRES-tdTomato-Luciferase2遺伝子をノックインした相同組換え体ES細胞を用いてキメラマウスを作製し、その子孫のレポーターマウスを得る。このレポーターマウスのB細胞が、実際にIgEへクラススイッチすると蛍光・化学発光タンパク質の発現が起きるか検証する。そのためにB細胞特異的SOCS1欠損マウスとレポーターマウスのかけ合わせ実験を行う。また、皮膚に抗原を塗布することによって誘導されるIgE産生をレポーターマウスで可視化できるか検証する。 機能制御の解析では、異なるサイトカインによる抗体産生のレシプロカルな制御に関して、SOCS1欠損によるIgG2cの産生上昇がIL-4によって抑制されるのかどうか検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。平成24年度では、レポーターマウス樹立のためのキメラマウス作製で、ES細胞の培養等に用いる培地、血清類に300千円、プラスチック製品に200千円、液性因子類、抗体類に400千円、その他試薬類に300千円使用する予定である。また、マウス作製の際に用いる胚盤胞(ブラストシスト)供給源として交配用マウスの購入を予定しており(500千円)、マウスの飼育や系統維持にかかる経費として300千円使用する予定である。
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