研究課題/領域番号 |
23590577
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
田中 貴志 独立行政法人理化学研究所, 炎症制御研究ユニット, ユニットリーダー (00415225)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 免疫学 / Th17細胞 / ユビキチンリガーゼ / LIM蛋白 / STAT3 |
研究概要 |
ヘルパーT細胞(Th)は生体に侵入した病原体の種類に応じてTh1、Th2、Th17と呼ばれる異なった機能を持つT細胞サブセットに分化する。転写因子STAT3は、それぞれTh17細胞の分化のマスター遺伝子として、ナイーブT細胞からTh17細胞への分化を誘導する。しかしながら、STAT3によるTh17細胞の分化を負に制御する分子メカニズムは、未だ十分には解明されていない。 申請者は、これまでの研究により、LIM蛋白ファミリーに属する核内ユビキチンリガーゼであるPDLIM2 (PDZ and LIM domain protein-2)が、LIMドメインを介してSTAT分子のユビキチン化・分解を誘導することにより、STAT4によるTh1細胞分化、および、STAT3によるTh17分化を負に調節することを明らかにした。さらに申請者は、同じくLIM蛋白ファミリーに属するPDLIM4がSTAT3を介するシグナル伝達を負に制御することを見出した。ところが、PDLIM4はユビキチンリガーゼ活性を有しておらず、実際PDLIM4はSTATをユビキチン化しなかった。さらに、PDLIM4は核内ではなく細胞質に存在しており、興味深いことに、蛋白脱リン酸化酵素であるPTP-BLをリクルートして、STATの活性化に必須のチロシン残基を脱リン酸化することによりSTATを不活性化した。また、PDLIM4欠損マウス由来のT細胞においては、Th17細胞分化が亢進しており、STAT3のチロシンリン酸化も増強していた。以上より、PDLIM2やPDLIM4などのLIM蛋白は、アダプター分子としてそれぞれ異なった細胞内因子と結合することにより、それぞれ異なったメカニズムでSTAT3シグナルおよびTh17細胞分化を負に制御している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、LIM蛋白ファミリーに属するPDLIM4が、STAT3の活性化およびTh17細胞分化を負に制御する分子メカニズムを解明することを目的とした。実際の本年度の研究においては、PDLIM4がLIMドメインを介して蛋白脱リン酸化酵素であるPTPBLと結合し、STAT3を脱リン酸化することによりSTAT3を不活性化することが明らかになり、当初の目的はおおむね達成できたといえる。一方、別のLIM蛋白であるPDLIM2は、LIMドメインを介してユビキチン化に関与する因子群をリクルートしてSTAT3をユビキチン化、分解することにより不活性化する。すなわち、LIM蛋白の活性の特異性を決定しているのはLIMドメインであり、LIM蛋白は、LIMドメインを介してそれぞれ異なった細胞内因子と結合することにより異なった機能を発揮すると考えられる。このことは、LIM蛋白の機能解析においては、それぞれのLIMドメインがどのような因子と結合するのかを探索するのが重要であることを示唆しており、来年度以後の研究の方向性を決めるためにも重要な知見であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、PDLIM4欠損マウスにおいて、個体レベルでのTh17細胞分化が亢進しているかどうかを解析する。 実際には細胞内寄生細菌であるPropionibacterium acnes (P.acnes)の加熱死菌をマウスに投与して個体レベルでのTh17細胞分化を誘導することにより、 PDLIM4が個体レベルにおいてもTh17分化を負に制御するかどうかを解析する。 さらに、P.acnesを用いてin vitroでTh17細胞分化を誘導した野生型およびPDLIM4欠損マウスの脾細胞(樹状細胞とCD4陽性T細胞を含む)を用いてマイクロアレイ解析を行うことにより、Th17細胞分化に必須の新たな因子を同定する。 また、ヒトの慢性関節リウマチはTh17細胞依存性であることが報告されている。そこで、抗II型コラーゲン抗体を用いて、野生型およびPDLIM4欠損マウスコラーゲン抗体関節炎(CAIA)を誘発し、PDLIM4欠損マウスにおいて個体レベルでのTh17細胞分化および関節炎が亢進するかどうかを検討する。 さらには、PDLIM4以外のLIM蛋白に関しても、STAT3のシグナルおよびTh17細胞分化を負に制御するかどうかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
蛋白発現実験試薬一式(トランスフェクション試薬、ゲル、抗体など):55万円細胞培養関連試薬一式(培地、サイトカイン、細胞分離キットなど) :50万円マウスおよび飼料 :15万円解析系試薬等(ELISA、RNA抽出、リアルタイムPCR解析) :39万円マイクロアレイ解析 :35万円
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