医師の医薬情報提供者(MR)との関わり方に関する質的研究が完了した。■医師とMRの不適切な関係が社会的に話題となり両者の関わりについて制限が設けられていく中でも、多くの医師がMRとの関係を継続している。医師のMRとの関係に対する態度はさまざまであることが分かっている。これまでの質的研究によるとMRと関係することによって生じる利益と害のバランスや医師の経験や職場環境がこの関係に対する医師の態度を決定する要因となることが示唆されているが、先行研究はある一時点での横断的な検討に限られている。我々は個々の医師における経時的な態度の変化とこの変化に影響を与える要因を明らかにすることを目的に本研究を実施した。●H22年12月に行われた利益相反に関するシンポジウムに参加した医師のうち研究協力の承諾を得られた者を対象に半構造化インタビューを用いた質的研究を行った。インタビューは個々の医師のMRとの付き合い方の変遷と付き合い方についての態度の変化、変化に関与したと思われる出来事に焦点を当てた。●協力者は卒後10~31年の9人の臨床医であった。初期のMRとの付き合いは上級医や職場の環境に合わせた受動的なものであり、数年後には職場環境や立場の変化に応じて自分の付き合い方を選んでいくようになっていた。付き合い方に対する態度は時間と共に変化しており、その変化の過程において態度は職場環境(職場の規則、役職、上司)や患者の視点、情報収集の仕方、プロフェッショナリズムや利益相反に関わる知識の習得などが影響していた。態度の変化は行動に結びつかない場合があり、組織の慣習がその大きな要因となっていた。●態度の変化と共に行動も変わるためには、個人の態度に変化をもたらす要因に配慮することに加えて、その人が属する組織の文化、規則、風習が変わる必要があることが示された。
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