研究課題/領域番号 |
23590582
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村井 ユリ子 東北大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (70209998)
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研究分担者 |
眞野 成康 東北大学, 病院, 教授 (50323035)
富岡 佳久 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00282062)
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キーワード | 薬学教育 / 薬剤師養成 / 実務家教員 |
研究概要 |
本研究の目的は、国民一人ひとりへの安全・安心な薬物療法の提供のため持続的に薬剤師の能力向上を図ることにある。薬剤師の持続的な資質向上にはトレイニーの教育と同時にトレイナーの資質向上を図る必要があるが、薬学教育におけるトレイナー側の問題として、附属病院がないなどの環境の中での教員の臨床能力向上があげられる。実務家教員でありながら臨床を離れて久しい教員も相当数いることなども解決すべき点である。そのために現職の薬剤師と、次世代の薬剤師となる薬学生、その養成に関わる指導薬剤師、大学教員それぞれの問題点を明らかにし、それらの克服のための体制のモデルを構築し、評価系を確立して成果を検証する。個々の患者への貢献を中心に据え、症例のフォローアップを軸に、薬物療法上の危険予知力向上を図れるような薬剤師実務教育システムを目指した。申請者らは先行研究により、産業界で用いられてきた危険予知トレーニングを実務実習プログラムに導入し、学生の問題解決力の向上を図ってきた。本研究でも、危険予知トレーニングの考え方を取り入れた。 本年度は特に学部教育に関して、実務実習事前学習における症例提示演習から、実務実習で指導薬剤師のもと症例フォローアップ実習を行う流れを確立し、評価を行った。成果は国際学会で発表することができた(FIP 2012, Amsterdam)。学生が担当患者の薬物療法に長期的に関わるために必要な要素として、医薬品情報についての実習(第16回日本医薬品情報学会)や、高機能シミュレータを用いたフィジカルアセスメント実習(医療薬学 vol. 38, 322-331)などについてもプログラムを作り、評価を行うことができた。また、大学院教育に関しては、東北大学病院化学療法センターにおける外来患者ケアを中心に、次世代薬剤師の養成についてのプログラムを構築することができた(日本薬学会第133年会)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学部学生、大学院生、教員、実務実習指導薬剤師など、それぞれの立場の教育プログラムを構築して運営し、評価を行っている。 学部教育に関しては、実務実習事前学習における症例提示演習から、実務実習での症例フォローアップ実習の流れを確立し、評価を行った。成果を国際学会で公表することができた。また、学生が担当患者の薬物療法に長期的に関わるために必要な要素として、医薬品情報についての実習や、フィジカルアセスメント実習などについてもプログラムを作り評価を行うことができたことは前述のとおりである。 また、大学院教育に関しても、化学療法センターにおける患者ケアを中心に、次世代薬剤師の養成についてのプログラムを構築することができた。 ただし現時点において、実務家教員については、持続的な教育・養成システムを整えることができたとは言い難い。また、卒後にジェネラルな力量を深めつつ、がん、感染症、栄養管理など、専門薬剤師を目指すための教育支援システムの構築も課題であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
院内外の種々の社会的なネットワークを活用し、本研究で検討してきた内容を紹介し評価を受けることにより、当初の目的を達成する。同時にその種々のネットワークでの活動を通じ、医療社会学の観点から薬剤師養成に関わる新たな問題や研究課題の発見・展開の可能性を探る。また、後述するように平成25年度も前年に引き続き、種々の学会を通じて成果の公表を進めるが、このことも研究の推進に通じるものと考えられる。 研究分担者の眞野は、宮城県病院薬剤師会の会長であり、研究代表者の村井は、その宮城県病院薬剤師会で薬学教育・研修特別委員会委員長として、県内の医療施設での実務実習の受け入れや、次世代の薬剤師の役割や業務を見越したフィジカルアセスメントなどの研修企画にあたっている。また研究分担者の富岡は、本学薬学部薬学科長であり、病院・薬局実務実習東北地区調整機構の委員のほか、全国薬学実務家教員連絡会議の東北地区代表として、学部学生・大学院生教育に関わっているほか、本学では地域薬局学講座も兼任して薬局薬剤師の生涯研修にも深く関与している。それぞれの会合や、学会などの機会を活用し、実務家教員養成システム構築の方策を探る。 一方、学部学生の実務実習における症例フォローアップ実習に、臨床医学論文の批判的吟味に関する演習なども新たに加え、本研究による教育および教育システムの成果の検証を行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
3か年計画の研究の最終年度にあたる平成25年度は、直接経費100万円と間接経費30万円で、合計130万円を請求している。本研究課題の総括と公表に重点をおいて、研究代表者と分担者間で配分し、有効に使用したい。早い時期に必要な経費を支出し、円滑な研究の進行を図る。ちなみに症例検討会等で活用するための医薬品情報データベースについては、年間使用契約に伴う支払いを平成25年2月に終了し、すでに現在データベースを使用することができている。 平成25年度の経費の使途としては、まず症例フォローアップのための症例検討会ほかの情報交換を遠隔施設間で行うためのWeb会議契約料(約20万円)を考えている。また、成果の公表のための費用として、学会での成果発表のための旅費(8月:第17回日本医薬品情報学会、名古屋。3月:日本薬学会134年会、熊本、11月:第3回日本病院薬剤師会東北ブロック学術大会、秋田など。約20万円)、ホームページ作成費(約20万円)、論文投稿料や英文査読料(約10万円)などを計上する。事務・資料整理等の謝金(約20万円)のほか、教材やデータ保存用メディアなどの消耗品の購入(約10万円)なども研究の総括のための費用として支出を計画している。
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