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2012 年度 実施状況報告書

医学教育における情報伝達・収集過程の分析ー医療面接と有害事象対応

研究課題

研究課題/領域番号 23590596
研究機関近畿大学

研究代表者

関 進  近畿大学, 医学部, 特別嘱託職員 (80422955)

研究分担者 森本 剛  兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (30378640)
作間 未織  兵庫医科大学, 医学部, 講師 (60349587)
前田 祐子  京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30378749)
キーワード医療面接 / 有害事象 / コミュニケーション / メディア処理 / 対話 / 非言語
研究概要

本研究は初期診療の状況を模した医療面接実習と,我々の新たに導入した有害事象説明実習という2つの医学生に対するコミュニケーション教育を対象とするものである.有害事象説明実習とは責任ある立場の医師が,発生した有害事象の説明を患者家族に行うという状況でのロールプレイによる教育手法で,医師に扮した学生に患者家族役の模擬患者への説明方法を自身に任せることで有害事象について深く考えることを期している.有害事象説明実習では学生から模擬患者への情報提供が主,医療面接実習では模擬患者からの情報取得が主となる.すなわち,これらの2つの実習は情報の流れが逆方向であると考えられる.本研究は対照的な2つの実習から,情報の提供・取得をどのように非言語がサポートするか,という観点で分析を行い医療における対話型コミュニケーションの総合的な教育的知見を明らかにすることを目的としている.
本年度は有害事象説明実習および医療面接実習の映像を整理,書き起こした上でデータベース化し,分析のための基盤を作ることを目指した.このため書き起こし従事者を雇用し発話内容と動作の書き起こしを行った.しかしながら書き起こし作業が難航し当初予定より大幅に遅れている.
そこで,書き起こしの終了した一部のデータを用いて,2つの実習の比較を行った.我々は全対話時間中に学生の発話時間の占める割合は,情報提供がメインである有害事象説明実習の方が医療面接実習より多く,逆に全対話時間中で学生が模擬患者の顔を見る時間の割合は情報取得がメインの医療面接実習の方が有害事象説明実習より多いと予想した.しかしながら,どちらも統計的に有意な差が出ず,特に顔を見る時間については予想に反し平均時間は有害事象説明実習の方が長かった.このことは,有害事象説明の緊迫した状況では相手からの情報をを得ようとするために顔表情を見る時間が長くなったものと推測される.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は分析の基盤としてデータベース作成をメインの目標とした.データベースを構成する発話や動作の書き起こしのためにスタッフを雇用をし作業を進めた.しかしながら予想以上に負荷が大きく,予定していた作業を実現することが出来なかった.
そこで収録した全データではなく,有害事象説明実習8データ,医療面接実習8データを対象として分析を行った.学生から模擬患者への情報提供を特徴付ける量として学生の対話時間1分あたりの発話時間(秒)を,模擬患者からの情報取得の特徴量として学生が対話時間1分あたりに相手の顔を見る時間を調べた.その結果,発話時間の平均と標準偏差は有害事象説明実習と医療面接実習でそれぞれ33.4(7.3)と28.7(4.6),顔を見る時間ではそれぞれ36.7(9.4)と27.9(7.7)であった.発話時間に関しては情報提供が中心と考えられる有害事象説明実習の方が平均時間は長いもののMann-WhitneyテストでP=0.16と危険率5%で有意な差とはならなかった.相手の顔を見る時間は有害事象説明実習の方が情報提供が中心と考えられるにも関わらず平均時間が長くなった(P=0.16).このことは情報提供状況でも情報取得が増えていることを意味する.発話という音声・言語情報では,話者間の行為は排他的となり情報提供と情報取得が共存しづらく発話交代が現れる.しかしながら,音声・言語情報と視覚的情報は共存できるために情報提供と情報取得が同時に現れていると考えられる.視覚行為として相手の顔を見る回数を採用すると,11.3(2.4)と8.0(2.6)となりP=0.04と危険率5%で有意な差が得られた.このことから,有害事象説明実習で提供する情報は非常に重大な事項であるので,相手が受容したかどうか,あるいはどんな感情を抱いたかなどの情報を取得するために頻繁に相手の顔を見ている可能性がある.

今後の研究の推進方策

次年度に,今年度実施できなかった書き起こし作業を継続し,データ全部について実施するのは時間的にも予算的にも難しい.そこで,収録データ中の一部を用いたデータベースを構築し,分析方法について精細に検討し研究を進めることにする.
今年度得られた成果から,有害事象説明実習では,伝達内容の重要性が学生,模擬患者の双方に大きな影響を与え,相手の顔を見る行為の増加につながったと予想される.そこで,音声・言語情報と視覚的情報の関係を調べる.このためには発話の言語的な内容についての分析が必須となる.そこで発話内容の分析方法を検討し,データベースに実装する方法に着いても考えて行く.また,実際のデータで発話内容を分析した結果と非言語的な振る舞いとの関連について調べることにする.

次年度の研究費の使用計画

次年度は言語の分析に力を注ぐことから言語解析に必要なソフトウェアを購入する.また,言語的な部分と非言語に関しては様々な観点からの検討が必要となるため,分担研究者との議論や,研究会への参加など旅費にも充当することにする.その他データ分析に必要となるハードディスクなど計算のための周辺機器の購入も行う.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2012

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] Comparison of nonverbal behavior between disclosure of adverse events and medical interview among medical students2012

    • 著者名/発表者名
      S. Seki, M. Sakuma, K. Takada, T. Morimoto
    • 学会等名
      Association for Medical Education
    • 発表場所
      Lyon, France
    • 年月日
      20120828-20120828

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公開日: 2014-07-24  

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