研究課題/領域番号 |
23590601
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
片岡 浩巳 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (80398049)
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研究分担者 |
奥原 義保 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (40233473)
杉浦 哲朗 高知大学, 医学部附属病院, 教授 (50171145)
久原 太助 高知大学, 医学部附属病院, 臨床検査技師 (80457407)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 蛋白分画検査 / 栄養モニタリング / 検査値推定 |
研究概要 |
蛋白分画波形から、複数の検査値を推定するソフトウエアの開発と栄養モニタリングに適した分析条件の調査を行った。開発したプログラムは、易動度の正規化と蛋白濃度の補正を基本とし、客観的栄養モニタリングに必要とされる臨床検査項目値の推定を行うことができる。また、波形の高さと病名歴との関係について全組み合わせの検査診断能を計算することで、尤度情報から病態を推定することができる仕組みを構築した。 基準値の導出と検査値の推定パラメータの導出を目的として、年齢、性別の分布が一様な、健康人データ約3000人の検体を測定し、基準値の導出と、同時に測定した他の項目の検査値を用いて予測式の導出と推定精度の検証を実施した。この実験により基準となる分画位置が明確になり、推定された検査値の情報がどの分画に含まれているかが詳細に読み取れるようになった。 キャピラリー電気泳動装置の分析条件の違いにより、推定可能な物質が異なることを証明するため、緩衝液の組成や泳動電圧の条件を統一し、複数波長で計測することにより、検出波長の違いによる物質検出能力の違いを検討した。200nmでの計測では、相関係数が良好な推定可能検査項目が12項目であったのに対し、214nmでは、30項目となり、分画のプロファイリングパターンの多様性の改善が得られた。一方、200nmではALBなどの主要蛋白の検出精度が向上する傾向があった。この結果から、同時多波長での測光を行うことが、推定精度の向上と経済性の面で極めて有効であることが解った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の基盤となる波形データベースの設計・実装およびプログラム開発と、キャピラリー電気泳動装置の分析条件に関する実験を行った。プログラム開発は易動度の正規化プログラム、検査値推定プログラム、および、検査診断特性計算プログラムを開発した。EMアルゴリズムを用いた混合分布の分離法に関する検討では、調査を引き続き実施中であるが、ALB、Tfのように分画が明瞭な波形に対する分離性能が良い傾向が認められたが、超微量成分に関しては、推定誤差が大きい傾向があり、アルゴリズムの工夫を実施中である。 多波長分析による検出分析物のレンジ拡張の課題に対しては、複数の波長の計測を追加することで脂質などの蛋白以外の物質を同時検出することが解った。しかし、これまで蓄積されてきた医療情報のデータ2次利用の視点を考えると、200nmで計測したデータを用いた推定法についても精査する必要があると考えられる。以上の結果より、平成23年度の目標は、ほぼ達成したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
実際の患者検体を測定し、分画波形と病態との関係を解明する。この研究において必要とされる電子カルテの半構造化形式で記録された臨床経過記録を構造化した形式に変換してデータウエアハウスを構築する。 さらに、患者群における推定検査値の精度の検証と時系列変化を視点とした栄養管理モニタリングの有用性評価を実施する。事前研究で良好であった推定検査項目(ALB、TTR、Tf、LDL-C、C3、CRP)を対象として、時系列的変化と治療経過(病期)との関係を明らかにし、最適なNSTの介入時期について考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は、プログラム開発と分析条件を決定する基礎データの収集を目的としたため、データベースサーバの購入を次年度にまとめて行うこととした。 平成24年度は、患者データの収集を積極的に実施し、大容量データベースサーバに連結不能匿名化処理を施したデータウエアハウスを構築する。このため、大容量サーバと分析に使用する分析試薬・消耗品を購入する予定である。また、本研究内容についてAACC学会(米国)での学会発表が決定したため、旅費としても利用する予定である。
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