研究課題
過去に通常診療依頼で測定された蛋白分画波形データに加えて、生化学検査の総蛋白が依頼された入院患者検体6000件を対象に蛋白分画検査を追加実施し、さらに、同日に通常診療依頼で測定された検査項目と、電子カルテに記載された病歴および経過記録データを収集し、匿名化データベースを構築した。波形データは、アルブミンのピーク位置を易動度=75とし,事前実験でDMFを内部標準液として混入させた時に出現するピーク位置を易動度=300となるように易動度を補正した。さらに、総蛋白値が7.0g/dlの時、曲線下面積が100,000となるように曲線下面積を補正し、波形の易動度と面積の標準化を行った。標準化を行った波形と、同時に測定された他の検査項目および経過記録情報との関係について解析を行った。栄養モニタリングで必要とされる臨床検査項目について、RBP、プレアルブミン、銅、CRP、SAA、亜鉛、C3、C4、トランスフェリンは、蛋白分画波形のパターンから物質量を推定できることが判明した。ただし、亜鉛については、良好で興味深い傾向が得られたが、N数が極端に少なかったため、今後、前向き研究を計画し再検する必要がある。また、健診等で利用可能なグリコアルブミン、HDL-CおよびLDL-Cに関しては、緩衝液の組成や検出波長を変更することで、極めて高精度に検出可能であることが判明した。蛋白分画検査から得られる泳動波形のみで、多くの検査値の推定が可能であることが判明した。その他、病名との網羅的関係性の検討において、前立腺癌と前立腺肥大との鑑別診断および、術後の管理に有効な検査法である可能性が示唆される結果を得た。
2: おおむね順調に進展している
半導体ディスクで構成された高速なデータベースサーバを導入し、このシステムに計測した波形データと電子カルテに記録された病歴および経過記録データを匿名化してデータベースを作成した。経過記録データは、電子カルテ上では半構造データで格納されているため、解析に必要な項目をピックアップし、構造化したテーブルに変換を実施した。蛋白分画検査は、通常の業務系で利用される自動分析装置に加えて、同時多波長計測が可能な研究用機器を借用して分析を実施し検討を行った。これらのデータについて、標準化した波形データに対する同時に測定された他の検査データ、病歴、経過記録データとの網羅的組み合わせの計算を実施し関係性を明らかにした。研究成果は、日本臨床検査自動化学会で、「蛋白分画波形パターンを用いた栄養管理モニタリングの有用性」、そして、AACC学会(米国)で、「Assessment of the nutritional state using waveform pattern of protein fractionation analysis」を発表することができた。
術後の蛋白分画パターンの解析を実施し、通常依頼の臨床検査値と推定検査値による栄養モニタリング法を比較し、モニタリング精度の向上と医療経済的なメリットが得られるかを評価する。また、背景疾患毎に階層化を実施し、NSTの最適な介入時期のルールの導出を試みる。また、本研究の測定波長変更による分析物の多様性の検討から派生した発見として、前立腺癌患者の診断支援の可能性が示唆されたため、検査診断特性と術後の経過モニタリングに利用可能かを、さらに深く検討を実施する。亜鉛量の推定の課題に関しては、特殊な採血が必要な点と検査費用の関係で、新たな研究計画を立案して証明すべきと考えている。
本研究成果について、AACC学会(米国)での発表がアクセプトされたため、旅費として支出する予定である。その他、構築したデータウエアハウスを利用して、さらに多角的に解析を実施し、学会発表と論文投稿のために研究費を支出する予定である。
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