研究概要 |
Shimazawa R, Ikeda M. Safety information in drug labeling: a comparison of the United States, the United Kingdom, and Japan. Pharmacoepidemiol Drug Saf 2013;22:306-18 【目的】医薬品の開発・承認審査はグローバル化が著しいが、同一医薬品でも、市販後の規制は国・地域によってしばしば異なる。本研究の目的は医薬品リスク許容度の国・地域差を検討し、より有効で安全な医薬品使用に役立つ添付文書のあり方を考えることにある。 【方法】米英三極で承認されている189の新有効成分医薬品の添付文書で、薬物動態や有効性を含めた記載量全体に対する、全ての安全性記載 (PSI)、禁忌 (PCI)、警告 (BW) の各項の比率を測定し(英語は語数比、日本語は字数比)、診療分野等の因子で層別し解析した。 【結果】189品目全体の平均では、PSIは三極とも46-48%と差がなかったが、診療分野別では、循環器(日40%, 米52%, 英51%:数字は平均値。以下同様)、悪性腫瘍(日56%, 米52%, 英47%)、神経(日45%, 米58%, 英50%)で明確な差が見られた。一方PCIの全体平均は米国で有意に低く、消化器、泌尿生殖器、悪性腫瘍の分野で日本のPCIが有意に高かった。BWは特に血液疾患と泌尿生殖器疾患の分野で日米の不一致が顕著であった。 【総括】医薬品の開発・承認審査に用いられる科学データは共通であり、一部の薬剤では薬物動態や副作用発現の民族差はあるものの、それだけでは今回の結果は説明できないので、非生物学的・社会的要因が添付文書記載を含めた市販後の規制に大きな影響を与えていると考えられる。
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