研究課題/領域番号 |
23590608
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
長澤 治夫 宮城大学, 看護学部, 教授 (30295381)
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キーワード | 終末期医療 |
研究概要 |
高齢者が住み慣れた地域で最後まで自分らしく生活できるように、保健・医療・福祉政策の1つとして、在宅医療の普及が挙げられている。介護保険制度が導入されても在宅で最後まで生活するには、夜間など同居家族の介護力に頼らなければ維持できないのが現状である。高齢者は様々な事情により必ずしも自分の自宅で最期まで生活できるとは限らず、病院や有床診療所などの医療機関、介護老人保健施設(老健)や介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などの介護保険施設をはじめさまざまな施設で、終末期を過ごしているのが現状である。2012年度は以下の研究活動を実施した。 【2012年度実績】 1)Haruo Nagasawa, Hitomi Kataoka, Yoshiko Sekikawa:The factors of pressure ulcers occurrence or change for the worse after the Great East Japan Earthquake: Evaluation by questionnaire survey. 4th Congress of the World Union of Wound Healing Societies (WUWHS2012) 2nd ~6th September, 2012, Yokohama, Japan 2)長澤治夫、片岡ひとみ、角川佳子:東日本大震災による褥瘡の発生・悪化の頻度およびその要因と対応‐第4回在宅褥瘡セミナー宮城参加者のアンケート調査‐ 日本褥瘡学会誌 14巻4号 573-576, 2012 3)東日本大震災被災地での在宅における要介護高齢者の褥瘡治療と予防に関する教育セミナーの開催 気仙沼市 4)一般市民を対象にした公開講座「高齢者の生活を支える在宅医療 」の開催 宮城大学
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2010年にシンガポールの慈善団体であるリエン財団が、経済協力開発機構(OECD)加盟国など計40の国・地域を対象にして、「各国における終末期ケアの評価(死の質)」について報告している。それによると日本の「終末期ケアの評価(死の質)」は、基礎的医療や介護環境では高く、一方利用しやすさやコストおよび終末期介護の質では低い評価で、40カ国・地域中23位で先進国の中では低い評価であった。英国、オーストラリア、ニュージーランドが最も評価が高く、アジアでは台湾14位、シンガポール18位、香港20位であった。本研究においては医療機関や介護保険施設以外で看取りも含めた終末期介護を行っているグループホーム、有料老人ホーム、高齢者専用賃貸住宅(高專賃)などの施設における医療依存度の高い高齢者の終末期医療の質と看取りについて詳細な調査を計画した。 2013年度は、在宅医療を専門的に実施している医療機関の協力のもとに2007年から2011年8月までに仙台市内および近郊の有料老人ホームで終末期医療を経て看取りを実施した22例の終末期医療・介護について詳細な調査を計画した。死亡例の基礎データとして、1)性、2)死亡年齢、3)主病名、4)死因、5)要介護度、6)終末期医療を受けた期間、等について調査した。終末期医療およびケアの内容として、1)呼吸管理(人工呼吸器による補助呼吸、酸素吸入、吸引など)、2)栄養・水分管理(胃瘻、中心静脈、末梢からの補液など)、3)排泄管理(尿導カテーテルなど)、4)疼痛管理(麻薬の使用など)、5)褥瘡の有無など、6)その他(輸血など)について調査した。更に、2007年から2013年3月までの高齢者施設における看取りを含めた終末期医療の調査を実施しながら詳細なデータの解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
わが国の年間死亡者数は、1960年には約70万人だったが、2010年には約117万人に達し、今後も死亡者数は増加していく。一方、医療機関の病床数は1990年ごろから徐々に減り2010年には約173万床になったが、そのうち90万床は本来の治療を行う一般病床で、医療機関だけでは看取りを含めた終末期医療を担うことができない状況にある。不足する看取りを行う場所を補う役割を期待されている介護保険施設は数が少なく、何年間も入所待ちの状況である。一方、2006年の調査によると高齢者のいる1,828万世帯のうち高齢者夫婦のみの世帯は539万世帯(29.5%)、高齢者単独世帯(独居高齢者)410万世帯(22.4%)で、高齢者夫婦のみと高齢者単独世帯を合わせて949万世帯(51.9%)を占め、介護を要する高齢者の家族の介護力が低下し在宅での看取りも難しくなっている。介護を要する高齢者数の著しい増加により、グループホームや有料老人ホームなどの施設で終末期を過ごす高齢者が増えている。行き場を失った終末期の高齢者が、有料老人ホームとして届け出していない「寝たきり専用賃貸住宅」で生活している実態も取り上げられ社会問題化している。このような施設は、医療職や介護職が常駐せず、外部から医療や介護サービスが提供されているのが実情で、充分な緩和医療を含めた終末期医療や全人的ケアが実践されているか否かは明らかでない。昨年度に引き続き仙台市内の訪問診療を実施している医療機関、訪問看護ステーションの協力を得て、有料老人ホームでの終末期医療・介護および看取りの事例の詳細な調査を引き続き実施していく。さらに今後は高齢者専用賃貸住宅(高專賃)などにおける医療ニーズの高い高齢者の終末期医療および看取りの実態について調査を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
直接経費 ① 物品費 450,000円、(内訳)パーソナルコンピューターおよび関連消耗品、一般事務用品・文具など ② 旅費 400,000円、(内訳)調査のための施設訪問旅費および学会・研究会参加旅費 第18回日本緩和医療学会学術大会 (2013年6月21~22日)横浜市、第15回日本褥瘡学会学術集会 (2013年7月19~20日)神戸市、第16回日本在宅医学会学術大会 (2014年3月1~2日)浜松市 ③ その他 450,000円、(内訳)図書・資料代 200,000円、資料印刷代 50,000円、通信費(切手、宅急便など) 50,000円、学会・研究会参加費 150,000円
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