本研究の目的は、宮城県内の介護保険施設や老人ホーム、ケア付き集合住宅など高齢者を対象にした居宅系サービス事業所での入所者の終末期医療の実態調査を行い、地域の医療機関と連携して、現在の法および社会保障制度で医療依存の高い高齢者が住みなれた地域で安心して人生を全うできる多機能型地域医療ネットワークのモデルを構築することある。 宮城県仙台市における在宅療養支援診療所の協力を得て、在宅および介護保険施設である介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設における終末期医療の実態調査を行い、地域における要介護高齢者がニーズに応じた医療・介護支援が可能なネットワークの構築を行ってきた。その結果、自分の家や介護保険施設以外の地域の居宅系介護施設に入所し、終末期を経て施設で死亡する事例が増加している状況が明らかになった。特に程度は様々であるが認知症高齢者が入所している民間のグループホーム等の居宅系施設が増加し、施設での看取り数も増加していることが明らかになり、急増する認知症高齢者の生活介護、終末期ケア、看取りに対する医療と介護のネットワーク構築が大きな課題であることが明らかになった。その理由として、1)民間のグループホーム等の居宅系介護施設では医師や看護師等の医療専門職が常駐していないため、特に医療的処置を含む終末期ケアが充分に実施でない、2)介護と医療の連携がとれない、などが明らかになった。更に有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(高齢者専用賃貸住宅を含む)では、施設での看取り数は多くはないが、医療処置を含む終末期ケアが充分に実施されないために施設を退所し、終末期に地域の医療機関に転院後死亡する事例が多いことが明らかになった。今後要介護高齢者の増加に伴い、更に多様化する民間の居宅系介護施設の入所者の終末期ケア、施設での看取りを含めた介護と医療の連携に関する問題が重要である。
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