研究課題/領域番号 |
23590613
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
小川 俊夫 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (40570974)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 政策研究 / 医療・福祉 / 社会医学 / 救急医療 |
研究概要 |
本研究の目的は、わが国において急速に普及している自動体外式除細動器(AED: Automated External Defibrillator)に着目して、AED関連費用の推計よりAEDの費用負担の実態の把握、AEDの費用対効果の推計、一般市民のAED利用に関する意識調査などを実施し、その結果を踏まえてわが国におけるAEDの社会経済的な意義を検討し、わが国におけるAEDの今後のあり方について考察することである。 研究初年度の平成23年度は、各都道府県におけるAED導入台数の推計値を用いて、全国及び都道府県別・年次別の導入台数を推計した。また、AED一台あたり費用を、本体価格と維持費用から推計し、それらを用いて各都道府県におけるAEDにかかる年間費用を推計した。 AEDの効果に関しては、院外発生の心肺機能停止傷病者データベースである「ウツタイン様式統計データ」にて入手可能な脳機能分類(CPC)を質調整生存年(QALY)に変換する手法の適用可能性について、先行研究で実施されたAEDの費用対効果分析の文献調査の結果を用いて検討を行った。特に、Cramら及びMerchantらによるCPCからQALYに変換する方法の実用可能性について詳細な検討を実施した。これらの検討を踏まえ、AED導入において得られたQALYを、年度別、都道府県別に推計した。さらに、推計したAEDの費用と効果を用いたAED導入の費用対効果として、増分費用対効果比(incremental cost-effectiveness ratio: ICER)の試算を実施した。 このような昨年度の研究成果により、わが国におけるAEDの費用対効果は、既存データを用いて分析可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、AEDの社会経済的な意義について検討することを目的とした研究であり、その一環として昨年度はAEDの費用対効果分析の手法について考察を実施した。AEDの費用はAEDの都道府県別、年度別の販売台数とAED一台あたりの費用から、年度ごとの総額費用の推計が可能であることが示唆された。AEDの効果については、「ウツタイン様式統計データ」を用いて費用対効果分析で一般に利用されているQALYへの変換が可能であり、その手法を用いて都道府県別・年度別のAEDの導入効果の試算が可能であることが示唆された。 これらの結果より、AEDの費用対効果はわが国においては既存データでの推計が可能であり、AEDの費用対効果分析の実施可能性が示唆された。これにより、研究初年度の目標はほぼ達成できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1) AEDの費用対効果分析の精緻化:昨年度試行したAEDの費用対効果分析については、費用および効果の両面から推計の精緻化の検討を実施し、より現実に即した費用対効果分析を試みる。 2) AED関連費用の将来推計:昨年度実施したAED関連費用の推計手法と同様に、今後5~10年間のAEDの導入予定台数を都道府県別に予測し、AED導入台数と費用について将来推計を実施する。実施にあたっては、台数及び一台あたりの関連費用について専門家の意見を踏まえて複数のシナリオを作成したうえで、都道府県別のAED関連費用の推計を実施する。 3) 「ウツタイン様式統計データ」を用いた費用対効果分析の推計:昨年度実施したAEDの費用対効果分析の検討結果とその精緻化の成果を踏まえ、QALYを用いたAEDの費用対効果を推計する。 4) AED利用に関する意識調査の分析:AED利用に関するインターネットを用いた意識調査を実施し、その結果を分析する。 5) AEDにかかる財政負担、費用対効果分析、意識調査などからわが国におけるAEDの今後のあり方やわが国および各都道府県におけるAEDの適正導入台数について考察を行い、その結果を政策提言として取りまとめる。さらに、これらの研究成果をとりまとめ、国際学会などにて積極的に発表を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、費用対効果分析手法の精緻化の検討とAED関連費用の将来推計、「ウツタイン様式統計データ」を用いた費用対効果分析の推計を中心に実施する予定である。特に、QALYを用いた費用対効果分析の実施にあたり様々な手法を試行することで、わが国の状況に適した費用対効果分析の手法について検討するほか、AED関連費用の推計についても、より詳細な推計を実施する予定である。さらに、費用対効果分析に必要なソフトウエアを導入して本格的な分析を実施する。インターネットを用いたAEDに関する意識調査については平成24年度に実施予定であり、その結果を踏まえてより多角的な視点からAEDの導入に関して検討を実施する。さらに、AEDにかかる財政負担、費用対効果分析、意識調査などからわが国におけるAEDの今後のあり方やわが国および各都道府県におけるAEDの適正導入台数について考察を開始し、その結果を政策提言として取りまとめるための準備を開始する予定である。 平成24年度においては、米国心臓病学会総会などの国際学会に参加して情報収集を行うと同時に、当研究の中間発表としての成果発表を行う予定である。
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