研究概要 |
自動体外式除細動器(AED: Automated External Defibrillator)は、心室細動の解析を自動的に行い、必要に応じて除細動を与える医療機器である。わが国ではAEDの普及は急速に進んでいるが、AEDの普及は自治体や企業の独自判断に委ねられており、AEDの適正導入台数などについては未だ検討されていないのが現状である。また、AEDの費用対効果についても、わが国では未だ検討されていない。 本研究では、AED導入に関連する費用総額と効用を都道府県ごとに推計したうえで、費用対効果を試算した。費用対効果としては、質調整生存年(QALY)を得るために必要な費用である増分費用効果比(ICER)を用いた。試算した費用対効果は、欧米諸国における先行研究の結果と比較したほか、わが国の医療システム全体におけるAEDの費用対効果について考察を実施した。 わが国の平成22年度時点の累計のAED導入台数は250,992台、AED実施症例数は3,954例で、AEDの費用対効果は全国で9,455千円と試算された。都道府県別に見ると、AEDの累計導入台数は東京都の34,325台から鳥取県の1,389台、実施症例数は東京都の627例から徳島県の6例と大きな違いが見られた。費用対効果についても福岡県の5,555千円から徳島県の45,505千円と大きな差が見られた。 本研究は、AEDの費用対効果を全国及び都道府県単位で推計したわが国初の研究であり、その社会経済的な意義は非常に大きいと考えられる。本研究の成果は、都道府県の救急医療体制の今後の整備とその予算、さらにはAED普及に関するガイドライン作成や政策立案に寄与するものと期待される。さらに、国際的に見てもAED関連費用について全国レベルで分析した研究は存在しないのが現状であり、本研究の成果は国際的にも注目されるものと期待される。
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