研究課題/領域番号 |
23590614
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
林 俊治 自治医科大学, 医学部, 准教授 (40260765)
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研究分担者 |
森澤 雄司 自治医科大学, 医学部, 准教授 (70302685)
吉村 章 自治医科大学, 医学部, 助教 (90448845)
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キーワード | アシネトバクター / 多剤耐性 / 院内感染 / 感染制御 / 選択培地 |
研究概要 |
多剤耐性アシネトバクター(MDRA)による院内感染アウトブレイクの制御方法の検討を行なった。その結果、MDRAに汚染された器具もしくは設備を早期に発見し、それらを廃棄もしくは消毒することが、最も有効な制御方法であることが判明した。汚染された物品を見つける方法としては、MDRAに感染した患者の情報を精査すること、およびMDRAによる院内感染が起きている病棟の環境を調査することが重要である。我々はこの環境調査に用いるためのMDRA選択培地を開発し、良好な成績を得ている。 アシネトバクターは乾燥耐性が重要視されている。しかし、我々の調査ではMDRAに汚染されていた物品は全て恒常的に湿潤状態にあるものばかりであった。具体的には、浴室、排水口、凍結薬品を融解するためのウォーターバスなどがMDRAに汚染されていた。 MDRAに有効な抗菌物質の発見を目的に、様々な化学物質のスクリーニングを行なっている。しかし、残念ながら、全てのMDRA菌株に有効な抗菌物質の発見には至っていない。ただし、MDRAのアミノグリコシド系抗菌薬に対する耐性はやや不安定であり、菌株によってはいくつかのアミノグリコシドに感受性を示す場合がある。逆に、カルバペネム系抗菌薬およびフルオロキノロン系抗菌薬に対するMDRAの耐性は安定であった。 平成24年末にMDRAに対する治療薬として承認されたチゲサイクリンについても検討を行なった、しかし、試験菅内での実験でも臨床での検討でも良い成績は得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多剤耐性アシネトバクター(MDRA)による院内感染アウトブレイクが起きた際に、それを制御するための方法はほぼ確立できたと考えている。方法の詳細について若干の改良の余地はあるが、この研究に関してはほぼ順調に進展していると考えている。 MDRAに有効な抗菌物質の発見を目的に、様々な化学物質のスクリーニングを行なってきたが、いまだにMDRAに有効な抗菌物質は見つかっておらず、この研究に関しては順調とはいえない。 以上より、研究全体としては、おおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
我々が確立した多剤耐性アシネトバクター(MDRA)による院内感染の制御方法を、複数の医療施設で実践したいと考えている。 MDRA選択培地の改良を行なう予定である。我々が開発した培地は、MDRA以外の細菌の発育をほぼ完璧に抑制するが、真菌の発育を抑えることができない。そのため、サンプルが真菌に汚染されていた場合、MDRAの検出に障害が出る。今後、抗真菌薬を加えた改良培地を作製する予定である。 MDRAに有効な抗菌物質の発見を目的とした化学物質のスクリーニングを、今後も続ける予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今までと同様に次年度においても、物品費のほとんどは細菌培養用の培地および器具に使う予定である。複数の医療施設で検討を行なう機会が得られれば、旅費などの経費が必要となる。 多剤耐性アシネトバクター(MDRA)に有効な抗菌物質の発見を目的としたスクリーニングを行なうために、抗菌活性が期待できる化学物質を多種類購入する必要がある。その多くは比較的安価だが、中には高価なものもある。 次年度は補助事業期間の最終年度にあたることから、研究成果の発表のための費用が必要である。具体的には、学会発表のための旅費、論文発表のための費用が必要である。
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