研究課題/領域番号 |
23590615
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
川村 文子 明海大学, 経済学部, 教授 (00227802)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 公営病院再構築 / 地域医療再生 / 医療・障害者福祉のネットワーク化 / 財務分析 |
研究概要 |
地域住民が平等に医療を受けるため、公営病院の存在は医療の最後の砦として必要不可欠の存在である。しかし、現状の自治体が運営する公営病院の75%が、赤字に陥り、2009年度累積欠損金は2兆1571億円に至っている。公営病院の再構築には、公営病院間での経営資源、障害者福祉介護情報の共有化を推進すること及び経営基盤の強化にある。 全国自治体の公営病院が平成20年度内に策定した「公立病院改革プラン」は、総務省「公立病院改革ガイドライン」により各自治体病院の地域医療の在り方を「公立病院改革ガイドライン」に沿って公営病院事業の経営改革に取り組むため策定させた経営計画である。自治体による経営計画策定は100%実施され総務省に提出されている。計画は、数値目標の設定がなされ、これまで問題とされてきたが手つかずだった公的医療に対する経営の健全性や数値による運用の見直しが行なわれている。公営病院の経営改革は、改革プラン策定2年以降、実施状況の点検・評価が求められている。 研究で企業経営上用いられている財務管理手法が、「地方公営事業法」の公営病院においてどこまで有効かについて明らかにしてきた。また、学識経験を改革プラン作成において公営病院の問題点を提言してきた。それは、次の2点を明らかにした。 (1) 地域医療において、経営組織形態が指定管理者制であれ独立行政法人制であれ、組織再編は厳しい状況下でも選択を早急に行うべきである。 (2) 経営基盤強化のための経営数値化は、資金繰りの悪化を示す不良債務化を明らかにし、何に使われなければならないかの重要な指標になっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、経営学と会計学および医療福祉学というこれまで共同研究することがない複合型研究である。公的医療は、金銭提供の有無よりも、患者の存在により医療サービスは、発生する。特に、地域医療について、障害者福祉・介護を含む一体となった医療システムの構築は、公営病院にしかできない。公営病院の整備とその経営基盤強化は、この新しい視点から医療の問題に取り組む特色と独創性を有している。そのため、多くの問題点は、医療現場の問題だけでなく設置主体や経営財務の問題にまで踏み込んで研究することに意義がある。計画の進捗に若干の遅れを感じたのは、東日本震災の影響である。科研費の使用および調査につき、多くの制約があった。
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今後の研究の推進方策 |
公営病院を中心とする障害者福祉・在宅療養支援との連動による医療福祉情報管理体制の構築については、以下の点を重点的に推進していく。 1.公営病院間の経営資源の共有化による医療障害者福祉介護情報管理体制の基盤づくり 2.地域医療の再生のための公営病院の経営基盤安定化 3.医療費抑制のための障害者福祉・在宅支援の基盤づくり 医療・障害者福祉介護情報管理体制の構築か、公営病院間の経営資源の共有化、安定化について、地域企業との異業種交流や中小企業間ネットワークも含め、諸外国における障害者福祉、介護実例等を参考にしながら具体的方法を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画は、アンケート調査と諸外国の実態調査を中心に行う。 今年度に収集したデータを踏まえアンケート案を作成し、アンケート調査を実施する。アンケートは、今年度行った調査に基に質問状を郵送する。同時に、諸外国での公営病院間の経営資源の共有化、障害者福祉、介護の実態を直接訪問して調査し、日本での医療障害者福祉介護情報管理体制との比較検討を行う。 収集したアンケート結果をもとに、統計的分析を行い、公営病院間の経営資源の共有化を形成するうえでの問題点、経営基盤安定化の阻害要因などを明確にしていく。実態調査の結果は、フィールドノートにまとめ、内容ごとに分類整理し、カテゴリー化して質的分析する。
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