研究課題/領域番号 |
23590622
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小山 由美 日本大学, 薬学部, 助手 (50318458)
|
研究分担者 |
羽入 敏樹 日本大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (70299981)
星 和磨 日本大学短期大学部, その他部局等, 助手 (50373171)
|
キーワード | スピーチプライバシー / 薬局 / サウンドマスキング / 医療施設 / リスクマネージメント / プライバシー臨界距離 / 患者 |
研究概要 |
医療従事者も患者も安心して会話のできる医療空間の実現を目指し、医療従事者自ら会話空間の欠点を認識するための簡易的評価法の確立を検討している。医療施設における会話空間の質的評価には、おもに騒音(うるささ)・会話のしやすさ(聞き取りやすさ)・会話の漏えいの3つの要素が基準となる。我々は、薬局(医療施設)における会話の漏えい保護(スピーチプライバシー)に焦点をあて、物理的側面からはABCルール(A:吸音,B:遮音,C:マスキング)に基づく漏えい度評価のアルゴリズムについて、人的・機能的側面からは会話の漏えい領域の簡易予測法および医療の特色(優先度)に即した実際的な評価のあり方について検討をおこなっている。 米国の医療施設およびFGIガイドライン(病院や医療施設の設計と建築に関するガイドライン)編集者への訪問調査(24年度)の結果、医療施設の音環境評価には複数の評価指標と水準が採用されていることから、これまで検討を進めていたスピーチプライバシー臨界距離(PCD)の有効性評価手法についても国際的な基準を指標に入れ比較検討をおこなっている。 薬剤師自ら会話の漏えい領域を評価するための簡易予測法についても、物理的側面からの検討と同様に国際的な視点から検討をおこなった。その結果、単語の親密度を考慮に入れた文章了解度試験をおこなう必要性が認められたことから、文章了解度試験用リストを作成し、評価の基準として利用可能であるか妥当性を検討している。 医療施設における音環境の実態調査では、それぞれの空間によって程度は異なるものの会話のしやすい(会話が聞こえやすい)領域が多く存在し、音響特性は測定していないものの、漏えい問題が存在する可能性は高いと考えられた。また騒音・会話のしやすさ・漏えいの各要素のバランスや比重の置き方は、業務内容や利用者の混み具合など環境の変化によって日内変動することが考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
会話環境の簡易予測法の確立に向け、評価指標・手法の妥当性と、会話の漏えい領域の簡易予測法を協力薬局にて検討する計画であったが、米国調査の結果(平成24年度)を検討した結果、医療施設の音環境評価には複数の評価指標と水準(FGIガイドライン)が重視されていることから、今年度は計画を一部変更し、これまでの評価法との違いについて検討を進めた。 物理的側面からの評価手法の確立では、これまでの手法に明瞭度の指標(AIやSTI)を考慮して検討を進めている。 また、人的・機能的側面からの検討では、会話漏えい度を医療従事者(薬局薬剤師)自身により簡易的に評価する手法の確立を進めているが、AIやSTIが会話の漏えい度の指標として十分ではない可能性が考えられることから、文章了解度試験用リストを作成し、基準としての使用に向け妥当性を検討している。
|
今後の研究の推進方策 |
調剤薬局の薬剤師が会話環境の弱点を自ら認識するための簡易的評価手法の確立に向け、次の研究をおこなう。 1)漏えい度評価のアルゴリズムの確立と保護度を予測する評価手法の検討(羽入,星) 2)薬剤師自ら実施できる漏えい領域予測法の検討(小山,星) 3)医療施設における会話環境の質に影響する要素の検討(小山) 4)簡易的自己評価シートの作成と協力薬局における試行(全員) 漏えい度および漏えい保護度の評価手法については、スピーチプライバシー臨界距離やパーティションの会話漏えい保護効果のシミュレーションについて妥当性を検討するため、模擬薬局や協力薬局にて音響特性や明瞭度試験を実施する。漏えい領域の予測法については、文章了解度リストの妥当性を検討するため、ダミーヘッドマイクを利用した音圧調整と被験者による書き取り試験をおこなう。医療施設における会話環境に影響する要素については、FGIガイドラインを参照し騒音・会話のしやすさ・漏えいに焦点を絞って問題点を検討する。簡易的自己評価シートの作成は、物理的漏えい度評価と人的機能的助長度評価を整理し簡易評価シートとして作成し、モデル薬局にて試行し診断結果について検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
米国調査の結果、医療施設の音環境評価には複数の評価指標と水準(FGIガイドライン)が重視されていることが明らかとなったため、計画を一部変更し、国際的な基準を考慮して研究内容の検討を行った。 そのため、物理的側面および人的・機能的側面からの評価指標の整理、簡易的自己評価シートの作成、模擬薬局や協力薬局における評価法の妥当性の検討は次年度に実施する計画である。 会話音声や暗騒音の周波数特性を測定し、漏えいとその保護効果を検討するため、オクターブ分析用プログラムの物品費として160,000円計上した。 薬局・模擬薬局等における実地調査(漏えい度評価、会話の漏えい領域の簡易予測法)などに係わる旅費・交通費として50,000円計上した。 現地調査の運搬代、心理実験への協力および薬剤師等の専門知識の提供に対する謝礼品、研究成果の投稿関係費等に対し、その他として150,000円計上した。
|