研究課題/領域番号 |
23590624
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
寺久保 繁美 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 研究技術員 (30398961)
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研究分担者 |
中島 秀喜 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (20192669)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 百日咳菌の血清抗体価 / サーベイランス |
研究概要 |
近年、我が国では百日咳の成人発症例が増加していることが指摘されている。その原因として抗体価低下が考えられる。若年成人の集団である大学生において百日咳菌の抗体価測定をおこない、抗体価および抗体保有率の検討が必要であると考え、本研究を行なった。 被験者となる若年成人は本学の2年生で、感染制御の学生実習時に採血した血清の残りを用いた。今回は2003、2005、2007、2009、2011年度の本学2年生の血清(478検体)を用いた。 PA法は百日咳凝集反応用抗原(デンカ生研)の百日咳菌抗体キットを用いて、東浜株と山口株に対する血清凝集素価を測定した。EIA法はBordetella pertussis/toxin IgG ELISA(DRG)を用いて抗百日咳毒(PT)抗体価を測定した。 PA法で東浜株(ワクチン株)に対して凝集素価が20倍以下を示した人は年度ごとに34.33%、41.18%、33.65%、47.12%、52.48%だった。山口株(流行株)に対して凝集素価が20倍以下を示した人は年度ごとに44.78%、59.80%、56.73%、40.38%、72.28%だった。DRG社のEIA法で抗PT抗体価が陰性(9 DU以下)を示した者は年度ごとに11.94%、14.29%、4.80%、25.00%、22.77%だった。 どちらの検査法においても抗体価の低い人が見られ、特に凝集法では流行株に対して40~70%の人が抗体を保有していないことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PA法は過去5年分(2003年、2005年、2007年、2009年、2011年)の測定が終了し、山口株、東浜株の凝集素価および両者の相関も測定できた。 EIA法の検査に於いて、予定していた和光純薬の検査キットが発売中止になり、入手できなくなった。今年度はBordetella pertussis/toxin IgG ELISA(ドイツ・DRG社)のキットを用いたため、抗PTのみの測定となった。FHA抗体価を除けば今年度の目標は達成できたと考える。 あと5年分の検体が凍結保存してある。
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今後の研究の推進方策 |
わが国では凝集素価(PA法)が広く活用されているが、百日咳ワクチン接種が凝集素価に影響を及ぼすと考えられている。国際的に使用されているのは抗PT抗体価(EIA法)だが、ワクチン接種長期経過による抗体価の低下が考えられる。 若年成人の百日咳菌の抗体価(PA法、EIA法)を測定することにより、各検査法の特徴および相関をみる。 今年度、国内メーカーのEIA法のキットが発売中止になり、やむなくDRG社(ドイツ)の試薬を使用したのでPT抗体価のみの測定となった。新しく発売となった国内メーカーではPTおよびFHA抗体価を測定できるので、購入したいと思っているが、試薬が高価なため、同一ロットを揃えるには高額が生じる。今年度使用残額では不足のため、翌年以降に請求する研究費と合わせて購入したい。 この抗体価の結果を基に、今後のワクチン接種の参考にできればと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度できなかったPTおよびFHA抗体価を測定するため、デンカ生研のEIA法のキットを購入する。また、残りの約500検体に対して抗体価の測定を行う試薬を購入する。 成果発表のための交通費等に用いる。
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