研究課題/領域番号 |
23590625
|
研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
能登 真一 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (00339954)
|
研究分担者 |
上村 隆元 杏林大学, 医学部, 講師 (10232795)
|
キーワード | 医療経済 / 効用値 / QOL |
研究概要 |
平成24年度は効用値の評価方法に関する手法とそれらの理論についての整理を行った.そもそも効用値が基数的効用として用いられていること,さらに最近の直接法の手法がTime Trade-off法(TTO)に収れんしつつあること,同時にTTOはLead-time TTOに進化しつつあり,これを用いると死よりも悪い効用値の評価がよりマイナス値を大きくする可能性があることを確かめた.また新たにDiscrete Choice Experiment法などが用いられるようになってきていることも確認された. さらに研究では日本で用いることのできる効用値評価ツールを使ったKnown Peopleに対する効用値評価を実施した.調査は全国6つの病院で実施し,対象疾患は脳梗塞,脳出血といった脳血管障害全般とした.効用値の測定にはEQ-5D-3L,EQ-5D-5L,Health Utilities Index(HUI)の3種類の測定ツールを用いた.また脳卒中の障害度の測定にはModified Rankin Scale(MRS)を用いた.合計525名分のデータが集積し,その特性は平均年齢が67.1±13.0歳,男女の内訳は男性320名,女性205名であった.MRSの分類では,4レベルが215名と最も多くなり,次いで2レベルの100名,3レベルの97名であった.効用値の平均はEQ-5D-3Lで0.55±0.25,EQ-5D-5Lで0.52±0.25,HUIで0.20±0.32となった.MRSごとの分布から,EQ-5D-5Lを用いて測定された効用値がもっとも的確に障害度を表していることが確認でき,EQ-5D-5Lは今後の効用値測定ツールとして期待が高まると予測された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的として,5つの研究疑問を掲げ,それらを実証研究も導入しながら解決に導くことを計画した.平成23年度と平成24年度の2年間でこれら5つの研究の目的のうち,(1)海外における効用理論をめぐる議論と方法論の整理,(2)Known Peopleに対する効用値評価の一部は終了した.また,(3)効用理論に関する概念的,倫理的問題の評価と(5)効用理論導入にあたっての問題点の整理については,他の研究者グループとの協議でかなりの問題整理がされてきた.残る研究目的は(4)利他的な効用値の評価であり,これを最終年度である平成25年度に実施する予定である.加えて,(3)の効用理論に関する概念的,倫理的問題の評価については,実証研究が残されており,(4)の研究目的と合わせて,最終年度に実施していく予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
研究最終年度である平成25年度は,一般住民を対象としたデータ収集がメインとなるため,調査方法の確定と調査会社の選定を急ぐ.当初は1000人の対象者に調査を実施する計画であったが,その後の業者との見積もり等のやり取りから予定された予算ではその人数の確保が困難なことがわかったため,対象者の人数を削減したうえでの調査開始となる予定である.平成25年中には調査を終了し,論文化を急ぎたい.
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|