研究課題
本研究では,臨床経済学で用いられるもっとも重要なアウトカムである効用値について,その概念的な理論を整理するとともに,運用上で議論となる倫理的問題を検証した.経済学で用いられてきた効用理論が医療の分野にも本格的に導入され始めたのは1980年代からであるが,当時は不確実性という概念を守りつつ,効用値を測定していた.つまり,standard gambleやtime trade-offという手法である.それが,現在の主流はtime trade-offを改良したlead time time trade-offや計量経済学を用いたdiscrete choice experimentとなっている.つまり,効用理論に純粋に基づいた効用値の算出ということよりも,より対象者にとって理解しやすい,ひいては測定しやすい手法を用いた研究が一般的となっていることがわかった.効用理論を医療分野に用いることについては,依然として倫理的課題を指摘する意見が少なくないが,この指摘の本質は効用値の測定方法ではなく,一元的なアウトカムで医療の資源配分をするべきではないというものである.一方で,日本国民の健康に対する価値観も変化してきていると考えられ,例えば,全国の1000人以上を対象にした調査では,理論的に死よりも悪い状態で長生きしたくないという国民が50%を超えたり,移動が困難な状態よりも死を選ぶという国民が20~30%存在した.この数値はイギリスでの調査よりも少ないものの,日本人の健康に対する価値観が「より健康な状態で長生きすること」にシフトしていると考えられ,医療の資源配分もそれら国民の意識を反映する必要があるものと示唆された.
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Niigata Journal of Health and Welfare
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