研究課題/領域番号 |
23590628
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
三宅 眞理 関西医科大学, 医学部, 講師 (50434832)
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研究分担者 |
西山 利正 関西医科大学, 医学部, 教授 (10192254)
田近 亜蘭 関西医科大学, 医学部, 助教 (80368240)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | オーストラリア / 高齢者介護 / 身体的負担評価 / 精神的負担評価 / 介護動作分析 / 3軸加速度 / NIOSH / 医療コミニュケーション |
研究概要 |
日本の高齢化は世界に例をみない速度で進行しており、要介護者の増加に伴い介護労働力の需要が増大する。介護は3K「きつい」「汚い」「危険」に加え「給料が安い」といわれ、労働力の確保と継続が困難である。豪州では介護労働の軽減を図るためには、リフトの導入やワークシェアリングや時間担当制などが実践されている。本研究は、介護労働の環境の相違が労働者の精神的身体的負担にどのように影響するのかを豪日の比較から検討した。豪州の高齢者介護施設(以下:ANF)の介護者43名と日本の高齢者施設(以下:JNF)の介護者40名の2つのグループを対象にThe National Institute for Occupational Safety and Health (NIOSH)のQUALITY OF WORKLIFE QUESTIONNAIREを用いてアンケート調査を行った。SPSS16を用いた統計処理の結果、仕事の満足感、上司の助け、チームワークの有無、仕事に対する速さや量の要求、残業、自分の知識が活用できるかどうかの質問においてANFはJNFと比較して有意に高値を示した。一方、仕事の要求度と内容、物理的環境のストレッサーにおいてJNFがANFに比較して有意に得点が高かったことから、日本の介護労働環境には、職場教育やチームワーク、支援のあり方、物理的環境などにおいて改善できる可能性があることが示唆された。さらに、アクティマーカー(3軸の加速度計:EW4800)を腰に装着して介護における活動量を測定した結果、就業中の平均歩数はJNFが1217±327.8歩、ANFが847.1±286.7歩を示し、平均Metsは、JNFが2.25±0.25、ANFは1.90±0.21を示した。本研究は豪日の一施設の比較ではあるが、わが国の介護の労働環境を再考する指標となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
基礎研究Iの小型無線身体動作評価機器(BFS:Bluetooth feedback system)の開発が遅れている。BFSはこれまでの研究で使用していた、身体活動計、睡眠評価計、心拍計を一つの機器にまとめられたもので、さらに筋肉の負担を測定する指標として筋電図も同時に測定することができる。BFSはBluetoothで送信できる小型発信器で身体の動作の情報を発信することができる。発信器にはジャイロ加速度センサー、筋電図(腰、脚、背中)と今回は心電図を追加して同時に集約することを目標にしている。本研究で開発するBFSは、動作解析ができる実験室において発信器を取り付けたシャツとスパッツを身につけて実施しているが、機器の故障のために一部の測定が遅れている。BFSの完成後は調査を再開し、測定後は心電図RR間隔のヒストグラムを解析し自律神経の変動から精神的ストレスについて調査する。24年の8月までにBFSを完成し、9月には臨床で活用したいと考えている。介護動作では、要介護者のベッドから車椅子への移乗が介護者の負担が大きいので、この動作に特定して、身体と精神の介護労働の負担を定量化する。介護労働の負担を軽減するためには、これまでオーストラリアの介護プログラムを調査して日本でも実施が可能である(1)チーム介護と介護機器の促進や(2)要介護者の自立を促進するプログラムを介入することで介護者の身体負担は軽減することが予測される。しかしながら、これらの介入とその評価についてはまだまだ未開発である。今回、開発されるBFSは介護現場における介護者の労働負担の評価が簡易に行えることから、25年にはこれらのプログラムの介入前後の評価と介護環境の異なる豪日における比較検討を行う。BFSを用いた介護労働の定量化を用いて介護労働の軽減プログラムの効果について論じる。
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今後の研究の推進方策 |
基礎研究I期間:平成24年4月~8月 小型無線式介護労働評価機器(BFS)の開発 基礎研究I-2(介入調査) 期間平成24年9月~25年3月介入調査(BFSを用いた介護労働の評価)場所は日本介護保険施設とオーストラリアの介護施設である。(1)チーム介護と介護機器の促進 2人一組の排泄介助、スライドシートの活用および2人一組の介護機器の利用介入前後の効果測定を行い、次に、(2)要介護者の自立を促進する介護ペリカンベルトを使った歩行補助および車椅子の移乗における自立サポートを行った後の追跡調査をする。今回、開発されるBFSは介護現場における介護者の労働負担の評価が簡易に行えることから、日本における介入調査と環境の異なる豪日における比較検討を行う。基礎研究II 小型ワイヤレス骨伝導音声伝達機器(ITC)の妥当性の評価医療コミュニケーション聴覚補助器具としてITC(Information Technology Communications)を活用して、患者と介護者における意思疎通状況を評価する。ITCは、通常の補聴器のように簡単に使える聴覚補助機器で空気の振動を利用する補聴器と違い個別の調整の必要がない。さらに、頭蓋骨の振動を利用して音声が伝わるため、騒々しい環境でも聞こえやすいという利点がある。ITCは小型の卓上型でワイヤレス仕様の集音器であり、これを定常的に装着するのではなく必要なときに患者が使える。ITCの妥当性の評価は平成24年1月~3月で、関西医科大学滝井病院の精神神経科ものわすれ外来患者を対象に終了している。今後、基礎研究II-2(介入調査)を平成25年4月~26年3月に実施し、医療・介護コミュニケーションの促進を行う。ITCが診察あるいは介護の現場でコミュニケーションをとることに有用ということを実証して、高齢者医療・介護の現場で効果的に活用できるツールとして普及させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
基礎研究I-2(介入調査) 基礎研究Iで開発したBFSを用いて介護現場での評価を行う。 現在の日本の介護現場では、一人で行う介護が主体で行われている。人員の不足などもあるが、これらのオペレーションを変更する試みが重要である。介護の専門職員に、介護補助機器の使用方法を十分トレーニングした後に、介護オペレーションに追加し安全で安定した使用頻度で行うことが重要である。このプロセスを実現するために次の機器の購入が必要である。(1)チーム介護と介護機器の促進のために、次の介護機器の購入し日本施設で追跡調査を行う。A.リフトの購入(ベッドから車椅子への移乗動作の補助具)B.スタンディングマシンの購入(車椅子から便座への移動動作の補助具)c.スライドシートの購入(チーム介護の促進と2人組での排泄介助補助具)(2)要介護者の自立を促進する介護プログラムの介入後の評価を行うために、次の介護補助具を購入する。D.歩行補助具を用いた自立歩行の促進補助具 歩行補助ベルトの購入する。要介護者自身の能力を最大限に活用するために、腰に歩行補助ベルトを装着する。このような補助具を用いるだけで介護者の身体負担がどの程度軽減するかBFSを用いて評価する。本年度は、小型無線式介護労働評価機器(BFS)の開発ご実用実験のために実験材料の消耗品や介護職員に協力してもらい動作分析を行うためにかかる謝金が必要である。豪州ではすでに、介護労働の軽減を図るために、リフトの導入やワークシェアリングや時間担当制などが実践されている。これらの教育プログラムについて渡豪して調査を行い、BFSを用いて豪州の介護労働の定量化を行い、日本との比較検討を継続するための旅費が必要である。なお、これらの成果について学会で発表するための旅費が必要である。
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