研究課題/領域番号 |
23590637
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
本間 真人 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (90199589)
|
キーワード | ゲムシタビン / SLC29A1 / mRNA発現 / 遺伝子多型 / 末梢血リンパ球 / 幼弱化抑制効果 |
研究概要 |
ゲムシタビン(GEM)の臨床効果に、がん組織上の核酸トランスポーター(SLC29A1)の発現の関与が指摘されている。SLC29A1の発現は、手術での摘出組織におけるmRNA発現や免疫染色によって評価するが、手術非適用の患者に応用できない問題点がある。SLC29A1は末梢血リンパ球(PBMC)にも発現していることから、その発現評価にPBMCを代用できる可能性がある。本年度は、PBMCにおけるSLC29A1のmRNA発現に及ぼす遺伝子多型(rs6932345とrs747199)の影響を検討した。 健常被験者46名から採取したPBMCを用い、rs6932345A>Cとrs747199G>Cを解析し、SLC29A1のmRNA発現量(ユビキチン補正)を測定した。その結果、rs6932345とrs747199は高度にリンクしている(84.8%)ことと、両SNPともに野生型におけるmRNA発現が変異型キャリアーと比較して有意に高いことが明らかとなった。したがって、どちらかのSNPを解析すればPBMC上のSLC29A1mRNA発現がある程度予測できると考えられた(Biol Pharm Bull., 36, 144, 2013)。 昨年度の結果から、PBMCのマイトゲン増殖に対するGEMの抑制効果は、rs747199の野生型において変異型キャリアーより強く認められているが、この現象の一部はPBMC上に発現するmRNA発現によって説明できると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
健常ボランティアの末梢血を用いたin vitroの研究(SLC29A1の遺伝子多型とmRNA発現およびPBMCのマイトゲン増殖に及ぼすGEMの抑制効果)はほぼ予定通りに進行したが、患者の末梢血を用いたin vitro研究とGEMの臨床評価に関する患者リクルートが当初の予定よりも遅れているため「やや遅れている」と評価した。 患者の末梢血を用いた研究では、当初予定していたGEM投与前に採血することが困難な場合が多く、症例の集積が進んでいない。現在、GEM投与中の患者も対象に評価できるか否かの検討を開始している。少数例を対象として予備的に検討しているが、投与する薬剤のタイミングと採血のタイミングによってGEMのマイトゲン増殖抑制効果の評価が異なる可能性が明らかとなり、最適な採血のタイミングを模索する必要がある。また、GEMのマイトゲン増殖抑制効果には、トランスポーターのSLC29A1以外にシチジンデアミナーゼ(CDA)やデオキシシチジンキナーゼ(dCK)が関与することも明らかとなり、これらの遺伝子多型解析の必要性も明らかになった。現在、SLC29A1、CDA、dCKの遺伝子多型を同時に解析できるSNP解析法を検討しており、プライマー設計が終了した段階である。
|
今後の研究の推進方策 |
健常被験者および膵がん患者から採取した末梢血リンパ球(PBMC)を用いて、GEMのマイトゲン増殖抑制効果に及ぼすSLC29A1、シチジンデアミナーゼ(CDA)、デオキシシチジンキナーゼ(dCK)の遺伝子多型の影響を明らかにしたい。SLC29A1はrs747199、CDAはrs2072671、dCKはrs4694362のSNPを解析し、GEMがPBMCのマイトゲン増殖を50%抑制する濃度(IC50値)との関係を検討する。また、これらのSNPを外来診察中に測定するために全自動SNP解析装置を用いた迅速同時測定法の開発も行ない、実臨床への応用性を高めて行きたい。患者検体では、GEM投与患者で求めたIC50値の妥当性を検証するための検討も開始している。具体的には、GEM投与前と投与後のIC50値の比較や投与中の患者における最適な採血タイミングを明らかにしたいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|