核酸誘導体のゲムシタビン(GEM)の抗癌効果には、細胞内取り込みにかかわる輸送タンパク質(SLC29A1)や 代謝酵素活性が関与しており、その活性評価が治療効果の予測に有用であることが指摘されている。これらの活性は、手術時に得られる摘出標本上のmRNA発現や免疫染色によって評価されてきたが、本研究では摘出標本に変わる素材として末梢血単核細胞(PBMC)を用い、活性評価の可能性について検討した。 先ず健常ボランティアから採取したPBMCを用い、マイトゲン(コンカナバリンA)刺激による幼弱化(増殖)に対するGEMの抑制効果を検討した。GEMの抑制効果には個人差があり、SLC29A1遺伝子多型(-706G>C)と関連していた。すなわち、野生型(G/G)と比較してCキャリアーではPBMC上のSCL29A1のmRNA発現が低下し、GEMのPBMC抑制効果が減弱していた。また、SLC29A1の阻害剤(ジピリダモールやニトロベンゼンチオイノシン)でPMBCを処理すると、GEMの抑制効果が減弱することも明らかになった。よってGEMの効果にはGEMの細胞内取り込みにかかわるSLC29A1が関与しており、その活性が低下するとGEMのPBMC抑制効果も減弱することが明らかになった。このことは、SLC29A1の活性評価にPBMCを用いることができる可能性を示している。 次いで膵がん患者のPBMCを用いて同様に検討した。限られた症例ではあるが、患者PBMCでは健常者PBMCと比較してSCL29A1mRNA発現が高く、GEMのPBMC抑制効果は減弱していた。この結果は、患者がGEMを投与されていることと関連すると考えられた。 SLC29A1活性に評価にPBMCを用いることができる可能性はあるが、患者のPBMCに適用する場合はGEM投与の影響を検証する必要があると考えられた。
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