研究課題
我々は、前年度までにMET遺伝子増幅胃癌細胞株MKN45から、PHA665752獲得耐性株(MKN45-PR)とGSK1363089獲得耐性株(MKN45-GR)を樹立し耐性機序の解明に取り組んできた。MKN45-PRのMET遺伝子変異(Y1230H)に加え、両耐性株においてMET遺伝子のコピー数の増加がみられたこと、および、これら耐性株において、MET阻害薬非存在下では増殖が著しく抑制される、いわゆる阻害薬"addiction"が併存することを論文報告した。前年度後半に、MKN45-PRとMKN45-GRをMET阻害薬非存在下で継代しrevertant株(MKN45-PR-REとMKN45-GR-RE)を作成したところ、両細胞株とも阻害薬に対する"addiction"の性質を失うこと、MKN45-GR-REではほぼ親株と同様の阻害薬感受性を回復するのに対し、MKN45-PR-REでは、阻害薬に対する高度耐性が保たれることを見出した。本年度は、この現象について、特に生化学的な解析を進めた。まず、MET遺伝子のコピー数を定量したところ両細胞株において減少がみられたのに対して、MKN45-PR-REではY1230Hが保持されていた。また、MKN45-PR-REではPHA665752反応下にもリン酸化型METは完全抑制されず生化学的耐性を保たれるのに対し、MKN45-GR-REでは、GSK1363089反応下にリン酸化型METが親株と同程度に抑制され、生化学的な耐性が解除されていることが分かった。以上より、Y1230Hは単独で生化学的・生物学的METキナーゼ阻害薬耐性を引き起こすのに十分であることと、その変化が不可逆的であることが示唆された。一方、コピー数増加もMETキナーゼ阻害薬耐性および阻害薬"addiction"を引き起こすのに十分であるが、その変化は可逆的であることが示唆された。これら結果から、MET阻害薬に臨床的耐性が観察された場合、耐性化機序により以降の治療方針を個別化できる可能性が示唆される。すなわち、コピー数増加のみによる耐性化の場合は一定期間MET阻害薬を休薬した後、同阻害薬を再度導入することが有用かもしれない。
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Oncology Research
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