研究課題
本研究では乳癌の術前治療において、パクリタキセルの効果および副作用と相関するタンパクをプロテオーム解析により探索した。倫理委員会の承認を得た臨床研究としてパクリタキセル80 mg/m2の毎週投与(12回)を術前治療として投与した乳癌患者から、治療前および初回投与後6~8日目の血漿を採取し、血液検査や副作用を毎週評価した。パクリタキセルに引き続きAC療法を3週毎に4回投与した。解析可能であった20例のうち、4例でgood PR以上の効果が得られ、grade 2以上の末梢神経障害が9例でみられた。治療前後の血漿をショットガンプロテオーム解析を行い、今年度はGood PR以上の奏効例と非奏効例、Grade 2以上の末梢神経障害発現例と非発現例で比較し、パクリタキセルの効果あるいは末梢神経障害と関連する因子を同定しその意義を検討した。その結果、治療開始前の10種および治療開始後の8種のタンパクの濃度、4種のタンパクの治療前後の濃度差に奏効例と非奏効例で有意な差を認めた。最も統計学的に差を認めたのは治療開始前のFibulin-1(p=0.0004)であったが、腫瘍縮小率との相関解析で同定された8種類には含まれなかった。治療前、開始後、開始前後の比較でそれぞれ8、4、5種のタンパクが末梢神経障害発現と相関した。最も統計学的優位性が高かったのは軸策輸送に関連すると考えられるDynein heavy chain 7 (axonemal)であり、これが治療前に低濃度だと神経障害を起こしやすく、また神経障害を起こした7例中5例で治療開始後に上昇していた。また抗腫瘍効果の解析で同定されたFibulin-1が末梢神経障害の解析でも優位な因子として同定された。今回同定されたタンパクはすぐに臨床応用できるものではないが、今後の研究でさらに検討していく価値があると思われる。
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Invest New Drugs
巻: 31 ページ: 293-303
Cancer Epidemiology Biomarkers & Prevention
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