研究課題/領域番号 |
23590645
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
池田 正明 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (80232198)
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研究分担者 |
熊谷 恵 埼玉医科大学, 医学部, 助手 (10506801)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 時間薬理学 / 時計遺伝子 / 抗腫瘍薬 / 時間治療学 / トランスポーター / 薬物耐性 / 時間医学 / 概日リズム |
研究概要 |
トポイセメラーゼI(topoisomerase I, 以下TopoI)の阻害剤イリノテカンは、トポイソメラーゼIに結合して酵素阻害を惹起し、細胞周期の進行を阻害することにより、細胞増殖を抑制し、抗腫瘍効果を発現することが知られている。イリノテカンを抗がん剤として用いると、投与時刻によって効果や副作用に相違のあることが知られている。私たちは、標的の発現リズムが抗腫瘍効果の日内変動に直接関連があるとの仮説に基づき、TopoIの発現リズムを解析したところ、TopoIは細胞レベルで概日リズム性発現を示すこと、プロモーターの解析から転写レベルで時計遺伝子によって転写制御されていることを見いだしている。本研究ではこれらの知見を基盤にして、TopoIの概日リズム性発現と細胞増殖、細胞周期との関連、TopoI阻害剤の効果発現との関連、腫瘍増殖性との関連を明らかにするとともに、TopoIの阻害剤イリノテカンによる時間治療のモデル細胞系を、マルチカラーレポーターシステムを応用して樹立し、癌時間治療の分子細胞基盤を確立することを目指している。平成23年度は、TopoIリズム発現と細胞増殖性との関連を、時計遺伝子とTopoIプロモーターレポーター活性のリアルタイム解析により、分子細胞レベルで明らかにすることを目指した。実施した実験は、TopoIプロモーターレポーターと時計遺伝子Bmal1プロモーターレポーターから得られるプロモータ活性リズムのリアルタイム計測法の樹立、およびTopoI 発現リズムの細胞種による相違である。主に泌尿器系臓器由来の細胞を中心に、遺伝子導入効率、培養条件の検討を実施し、解析のための細胞系を樹立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の前段階として、線維芽細胞の培養系による時計遺伝子プロモーターレポーターのリアルタイム計測を樹立している。また、マウスよりTopoisomeraseI 遺伝子のプロモーター領域をルシフェラーゼレポーターベクターにクローニングし、転写発現機構の解析を完了している。この系を各種癌細胞に移行する実験を本課題で実施した。本課題で主に使用しているのは、泌尿器科系の臓器(主に腎臓)由来の細胞で、トランスフェクション効率、培地の条件を検討し、高発現条件を得た。リアルタイム計測のための機器は、培養条件として設定可能なのは、温度(37度)のみであり、二酸化炭素の供給装置は付属していないため、培養液はHEPES緩衝溶液を添加してpHの変化に対応可能な実験系としている。今回利用を計画した細胞の中には、この培養条件で生育しないものがあり、今後、培養条件の検討が必要となっている。
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今後の研究の推進方策 |
現在実験に供している培養細胞の培養条件の検討には時間を要する可能性があり、他の腫瘍由来細胞を準備しつつ、検討を継続する計画である。この検討を行っている間に、既に細胞系を樹立している線維芽細胞の系を利用した実験系を用いた実験を先に実施することを計画している。腫瘍細胞は低酸素によって増殖性に変化があることが知られており、血管の増殖を阻害する薬物には、抗腫瘍効果のあることが知られている。低酸素効果と細胞の増殖性に概日リズム性の変動があることを明らかにし、また、抗腫瘍薬の標的因子が低酸素状態が起こる時刻によって、その発現に変化のあるかについても同時に検討を行い、低酸素治療の時間薬理学的解析のモデル細胞系の樹立と時間治療効果の判定を行う計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に実施を計画している実験は、主に培養細胞系を用いた解析であり、培養細胞の購入、培養細胞維持のための試薬、遺伝子導入試薬、リアルタイム計測のための試薬、細胞増殖解析試薬および発現を確認するための抗体、qPCR試薬などの物品を購入する支出が中心である。また、ここ迄の研究成果を発表するための学会出張旅費を計上している。
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