研究課題/領域番号 |
23590647
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
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キーワード | 尿酸 / 痛風 / トランスポーター |
研究概要 |
他のほ乳類に比べ高いヒトの血中尿酸値は主に腎尿細管における尿酸再吸収により制御されている。研究代表者らはこれまでに、腎尿細管の尿酸再吸収は管腔側の尿酸トランスポーターURAT1と血管側の尿酸トランスポーターURATv1がタンデムになって担う事を明らかにしているが、この両者に遺伝子変異のない家族性腎性低尿酸血症患者が確認されたことで、第三の分子"URAT2"の存在が推測された。本研究は、URAT2による尿酸輸送活性の詳細な解析による確認と、URAT2を分子標的とする新規尿酸降下薬創製のための基盤の確立を目的として行われた。 研究代表者は有機酸トランスポーターOAT10として報告されたクローンSLC22A13が低親和性の尿酸トランスポーターであることを既に確認していたが、古典的生理学解析手法により想定された低親和性トランスポーターの特徴とされる乳酸やケトン体など幅広いモノカルボン酸による交換輸送機序の詳細は不明であっため、OAT10がURAT2であることの実証を目指し、昨年度OAT10による尿酸輸送活性の解析を行い、その輸送特性が同じく腎臓に発現するURAT1に類似の有機酸交換輸送であることを見出していた。今年度は昨年度において成果が出ることを予定していた、乳酸やケトン体などの幅広いモノカルボン酸による交換輸送機序の詳細に関し、アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いてさらにOAT10による尿酸輸送活性の解析を行い、その輸送特性と既存のURAT1とどのように異なるのか、特に基質認識の相違点について明確化を行い、URAT2による尿酸輸送阻害薬物の化学構造情報を得るに至った。これを海外研究協力者であるColorado大学のMichael F. Wempe准教授に送付し、最終的に当初の予定通りURAT2による尿酸輸送阻害候補低分子化合物ライブラリー(少量規模)作成開始に至ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の実施状況報告書にも記載したように、研究代表者は、平成23年10月1日より現職に異動となったため、平成23年の6月の時点で獨協医大への異動の手続きが始まられてしまい、上半期は10月からの異動に向けての検体の整理、文献情報の収集およびデータのまとめを中心にした研究活動に限定された。10月からの異動後も、前任地で利用していた実験動物の搬入許可および新環境への動物の適応期間の待機、さらには使用していた放射性化合物の移転手続きに時間を要したため、11月半ばを過ぎてから実験活動の本格的再開できることとなった。その後は年末年始も休み無く活動を続けたが、最終的には予定検討項目全てに関する成果のとりまとめには位足らず、また研究費の面でも次年度使用額が残る結果となった。今年度、昨年度からの遅れを取り戻すべく努めたが、今年度末に至ってもまだ若干の遅れを引きずっているため、(3)の区分が相応しいと考え選択した。
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今後の研究の推進方策 |
当初また次年度に行うトランスポーター阻害薬の化合物スクリーニングでの利用のために、 URAT2の安定発現培養細胞系の樹立を目指し、これまでにURAT1の安定発現細胞樹立に利用されたほ乳類培養細胞であるHEK293に、Lipofection法を用いてURAT2遺伝子導入を行う予定であったが、上記の通り昨年度の遅れがあるためそれを解消するべく、URAT2安定発現細胞のステップは飛ばして,従来通りアフリカツメガエル卵母細胞を用いた発現系で代替することで、遅れを解消したい。 また既に創製に成功しているヒトURAT2遺伝子を過剰発現するトランスジェニック(URAT2 Tg)マウスの出生直後からの体重や尿酸およびクレアチニン等を中心とした血液・尿生化学検査データの変動を解析結果を整理し、早急にURAT2尿酸輸送阻害化合物のin vivo効果の判定に利用する尿中尿酸排泄亢進モデルとして利用可能か否かの判定を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の早期に、海外研究協力者のMichael F. Wempe准教授のラボを訪問し、構造活性相関データを基に議論を行いURAT2による尿酸輸送阻害候補低分子化合物ライブラリー(少量規模)の作成を共同で行う。作成終了後はアフリカツメガエル卵母細胞を用いたURAT2発現系を用いて、低分子化合物ライブラリーのスクリーニングを行い、その阻害作用の評価を行う。並行してURAT1発現系でも同様に検討を行い、強い阻害作用を示す化合物群に関しては、さらにIC<SUB>50</SUB>値の算定を行い、最終的にURAT1選択性、URAT2選択性、非選択性化合物の選別を行う。 また上記のURAT2 Tgマウスの血液・尿生化学検査データの変動を解析結果の整理により、URAT2尿酸輸送阻害化合物のin vivo効果の判定に利用する尿中尿酸排泄亢進モデルとして利用可能であると判断された場合には、URAT1 Tgマウスとともに、上記の選別済み化合物を尾静脈より投与して、排泄される尿中尿酸量を計測し、in vivoにおいても選択性が保たれているかの検討を試みる。
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