研究課題
筋萎縮性側索硬化症 (ALS)は、運動ニューロンの変性を特徴とする予後不良の疾患である。本研究は、膜脂質過酸化により生じるアルデヒド産物4-hydroxynonenal (HNE)が誘発する細胞死に対して抑制作用を示すN-acetyl-L-cysteine (NAC)を用いて、ALSの発症や病態の進行におけるHNEの役割について精査するとともに、NACおよびその誘導体を用いた新規ALS治療薬の開発を試みることが目的である。昨年度までの検討により化学修飾により体内動態を改良したNAC誘導体は、有効なALS治療薬となる可能性が示された。また、prostaglandin E2 (PGE2)の増加がHNEの産生を関与する可能性が示唆された。そこで、本年度は、脊髄内でのPGE2代謝酵素の変化を検討したところ、PGE2の代謝酵素の一つであるNAD+-dependent type-I 15-hydroxyprostaglandin dehydrogenaseの発現が発症後期でのみ増加した。そのため、脊髄におけるPGE2量の増加は、PGE2代謝系の低下によるものではなく、mPGES-1を中心としたPGE2産生系の亢進が関与することが示唆された。さらに、運動ニューロン様株化細胞NSC-34を用いて、PGE2暴露によるEP2の発現変化について検討を行った。PGE2の前処置は、EP2の発現レベルを上昇させるとともに、PGE2が誘発する細胞死を増強することが明らかとなった。以上の結果より、HNEはALSの進行に重要な役割を演じており、NAC誘導体は運動機能障害発症後にも有効なALS治療薬となる可能性が示された。また、HNEの産生亢進機構にPGE2シグナル伝達系が影響を及ぼす可能性が示唆されたが、その詳細については今後の検証が必要である。
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