研究課題/領域番号 |
23590651
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
鈴木 勉 星薬科大学, 薬学部, 教授 (90130757)
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研究分担者 |
成田 年 星薬科大学, 薬学部, 教授 (40318613)
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キーワード | Morphine / 吐き気 / 便秘 |
研究概要 |
前年度、M1-受容体に高親和性を持つolanzapineがmorphineにより誘発される嘔気・嘔吐に対して有効性を示したことからより、副作用の少なく選択性の高いpirenzepineを用いてmorphineにより誘発される副作用に対する抑制効果を検討した。その結果、pirenzepineは、フェレットにおけるmorphineにより誘発される嘔気・嘔吐を非常に強く抑制し、さらに、マウスにおける小腸ならびに大腸輸送能抑制効果を有意に抑制した。以上の結果より、pirenzepineは、緩和医療において問題となっているmorphineの副作用を抑制しうる有用な薬剤となることが考えられた。 フェレットによる嘔気・嘔吐は、簡便性に欠くことから、アミラーゼを指標にした嘔気・嘔吐のスクリーニングについて検討を行った。催吐作用の非常に強いapomorphineはラットにおける唾液中のアミラーゼ活性を著明に増加させた。また、morphine、oxycodoneならびにfentanylはいずれもアミラーゼ活性を有意に増加させ、この効果は制吐薬であるprochlorperazine によって有意に抑制されたため、本系が嘔気・嘔吐のスクリーニング系として有用である可能性が示唆された。 Morphineの精神依存性ならびにせん妄に関与していると考えられている側坐核ならびに線条体におけるmorphineによるドパミンの放出について検討した。その結果、morphineは側坐核において選択的にドパミンの放出を促進していた。また、ドパミンの放出に伴う自発運動促進作用は、定型抗精神薬であるhaloperidolの低用量によって強く抑制され、非定型抗精神薬であるclozapineに対して抵抗性であった。よって、morphineによるせん妄に対しては、haloperidolなどがより有用であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存薬に比べより副作用の少ないpirenzepineに注力したため、既存薬による血糖に関しては検討出来なかった。しかしながら、pirenzepineの有用性を見出すことができ、さらに嘔気・嘔吐に関してスクリーニング系の構築などを行なえた。また、精神依存形成に関する評価は予定通り行なえた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、オピオイド鎮痛薬による便秘に関する中枢ならびに末梢支配について、小腸ならびに大腸に対する違いを検討するとともに、便秘を引き起すための脳・脊髄および末梢のオピオイド受容体のmorphine、oxycodoneならびにfentanylといった各オピオイド鎮痛薬の選択性について検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究を遂行するにあたり、ラットおよびマウスなどの動物を購入する。また、タンパク量の測定ならびに免疫組織化学的研究のための抗体ならびに関連する消耗品を購入する。次年度は、なぜpirenzepine が有効性を示したのかを明確にするために機序解明のための試薬ならびにキットなどの消耗品を購入する。
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