研究課題/領域番号 |
23590652
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
高橋 晴美 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (20211344)
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研究分担者 |
塩見 真理 明治薬科大学, 薬学部, 助手 (30300768)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ワルファリン / CYP2C9*3 / VKORC1*2 / 人種差 |
研究概要 |
【目的】ワルファリン(WF)導入治療の最大課題である出血リスクを軽減することを目的として、WF導入アルゴリズムの作成にむけて検討を開始した。【方法】WFを外来導入した中国人患者74名を対象とし、WF投与開始前にCYP2C9*3とVKORC1*2遺伝子検査を行った。次いでWF導入後3ヶ月間について(1)WF投与開始後血中WF濃度(Cp)が上昇する過程、(2)Cp上昇により凝固活性(NPT;血漿中活性型Normal Prothrombin濃度)が低下する過程、(3)凝固活性(NPT)の低下により抗凝固効果(INR)が上昇する過程のそれぞれの時間推移とそれらの変動要因を定量的に表現できるモデルを母集団解析法により構築した。【結果・成果】(1)Cpは一次吸収過程のある1-コンパートメントモデル、NPTが低下する過程は生成阻害型間接反応モデル、INRが上昇する過程は凝固活性阻害率を基にした非線形モデルを用いて、母集団解析をNONMEM法により行った結果、Cp、NPT、INRのいずれの時間推移も概ね実測値を反映するモデルを構築できた。(2)各過程の変動要因としてCpの上昇(経口CL)はCYP2C9*3変異と体表面積、NPTの低下(IC50)はVKORC1*2変異、INRの上昇(λ)は投与前NPTが抽出された。(3)WF導入期においてINR>4を示した患者群(11名)とINRコントロール群について各3過程の決定因子である経口CL、IC50、投与前NPTを比較した結果、INR>4の患者では経口CLのみが有意に小さい結果を示した。従ってWF導入期のover-anticoagulationには、CL低下を起こすCYP2C9*3変異やCYP2C9阻害薬の併用が寄与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度の目標は、血栓症予防の目的でWF導入予定のアジア人(日本人と中国人)患者を対象にWF導入後3ヶ月の間定期的に採血を行い、(1)投与開始後WF血中濃度が上昇する過程、(2)WF血中濃度の上昇に伴う凝固活性(NPT)が低下する過程、(3)凝固活性の低下に伴い抗凝固効果(INR)が上昇する過程に及ぼす遺伝子変異や患者背景因子の影響について検討し、母集団解析法によりPK/PD過程におけるモデル解析を行うことであった。日本人患者においては現在は各施設倫理委員会で承認を受け患者エントリーの段階であるが、中国人患者においては、おおよそこれら3つの目標を達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
1.現在日本人と白人患者のエントリー数を増やすため、他の共同研究施設の協力を依頼中である。2.予備的検討により、黒人患者においてはアジア人に比較して体内動態(PK)はWFのCpが上昇し(CLが小さい)投与量を低下する人種差が存在するが、一方感受性(PD)に関しては黒人患者はアジア人と比較して低感受性であり投与量を増加させる方向の人種差が存在する結果を得ている。今後はWF投与量に影響するこれらPKとPDの相反する人種差の影響因子を解明するための検討を開始する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.H24年度の研究は、白人・黒人患者を対象にWF導入後3ヶ月までの間経時的にWF血中濃度、凝固活性(NPT)と抗凝固効果(INR)を測定し、遺伝子変異検査(CYP2C9、CYP4F2、及びVKORC1遺伝子)を導入前後に1回行うと共に、出血事象を継続的に観察することを計画している。2.海外研究協力者であるDr. Larisa H Cavallari(University of Illinois at Chicago, USA)は既に本研究に対してUICのIRBの承認を受け、黒人患者のエントリーを開始している。3.H24年度の研究費はサンプル輸送費と明治薬科大学で行うCpやNPT等の測定に必要となる試薬や器具の購入に使用予定である。
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