研究課題/領域番号 |
23590652
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
高橋 晴美 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (20211344)
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研究分担者 |
塩見 真理 明治薬科大学, 薬学部, 助手 (30300768)
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キーワード | ワルファリン / CYP2C9*3 / CYP2C9*8 / VKORC1*2 / 人種差 |
研究概要 |
【背景・目的】異なる人種においても適応可能なワルファリン(WF)導入治療アルゴリズムを作成する目的で、体内動態(PK)と薬物応答性(PD)に関する遺伝子情報を基にアジア人(台湾系中国人)に加えて、黒人患者を対象とした検討を開始した。WFの抗凝固効果の主体であるS-WFのCLpo(CL)は主代謝酵素CYP2C9の遺伝子変異の影響を受け、黒人ではアジア人や白人とは異なる特有の変異型(CYP2C9*5,*6,*8,*11)が存在する。しかし黒人の体内動態(PK)について人種間の比較検討はなされていない。そこでH24年度はPKの人種差に注目して、黒人・中国人患者を対象にCLを推定し人種間での比較、及びCLの変動要因を探索した。 【方法】NONMEMを用いて母集団解析を行いCLを推定した。①黒人(56名、採血ポイントは定常状態の1点)・中国人(74名、総採血ポイント:542点)の患者背景因子を確認した。②PKモデルを一次吸収過程のある1-コンパートメントモデル、誤差モデルを個体間変動は指数誤差モデル、個体内変動は相対誤差モデルを選択しBase modelとした。③患者背景因子の内部相関を検討し、モデルの精度が上昇する背景因子を組み込みFinal modelを構築した。 【結果・成果】①構築したPKモデルのCLは黒人の方が中国人より約38%有意に低かった。これは黒人の維持量が中国人より高い事実とは逆方向であった事から、黒人維持量の人種差にはPKの人種差(低CL)とは逆方向に働くPDの人種差(低感受性)が関与している可能性があった。②CLの有意な変動要因に関してはCYP2C9*3・CYP2C9*8・性別(女性)・年齢の順で影響が大きかった。人種が変動要因として検出されなかったことからCLの人種差は、単に“人種”でなくCYP2C9遺伝子変異の出現頻度の人種差等で説明できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の目標は血栓症予防の目的でWF導入が予定されているアジア人に加えて、黒人患者を追加し、PKの決定因子であるCLに認められる人種差の影響因子を母集団解析により明らかにする事であり、この目的は達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
1.海外共同研究者であるDr. Larisa H Cavallari (University of Illinois at Chicago, USA)が黒人患者のエントリーとWF導入患者に対して投与開始後最低1ヶ月間の経時的な採血を既に開始している。 2.現在白人患者のエントリー数を増やすため、他の海外共同研究施設の協力を依頼中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.H25年度はアジア人・黒人・白人患者を対象に①投与開始後WF血中濃度が上昇する過程、②WF血中濃度の上昇に伴う凝固活性(NPT)が低下する過程、③凝固活性の低下に伴い抗凝固効果(INR)が上昇する過程に及ぼす影響因子について、構築したPK/PDモデルを用いて母集団解析により明らかにする。 2.母集団解析結果を基にINRの時間推移に及ぼす各影響因子の影響についてsimulation studyを行い、有効で安全なWF導入治療アルゴリズムを立案する予定である。 3.H25年度の研究費は明治薬科大学で行う各種測定・解析に必要な試薬・器具の購入と測定・解析のための人件費に使用予定である。
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