研究課題/領域番号 |
23590654
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
三島 健一 福岡大学, 薬学部, 准教授 (00320309)
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研究分担者 |
藤原 道弘 福岡大学, 薬学部, 教授 (10091331)
入江 圭一 福岡大学, 次世代女性生命科学研究所, ポストドクター (50509669)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ADAMTS13 / 脳虚血 / VWF / 血栓 / t-PA |
研究概要 |
内因性生理活性物質ADAMTS13(a disintegrin-like and metalloprotease with thrombospondin type 1 motifs 13)は,血液凝固のtriggerであるフォン・ヴィレブランド因子(von Willebrand factor;VWF)を切断するメタロプロテアーゼである. 本研究課題は, ADAMTS13が脳梗塞発症時において果たす役割の解明とADAMTS13を利用した治療法の確立を目的としている.本年度は, ADAMTS13の増減が脳梗塞病態に与える影響を検討した. 実験は, ddY雄性マウスにMCA閉塞処置を行い,ADAMTS13を投与した後, TTC染色を行い,梗塞巣への治療効果を評価し, 血栓溶解薬として脳梗塞に使用されている組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA;tissue plasminogen activator)と比較した.また, ADAMTS13K.O.マウスに中大脳動脈(MCA)閉塞処置を行い, MCA閉塞後のADAMTS13のK.O.マウスの脳内炎症因子のHMGB1を解析した. その結果, ADAMTS13はMCA閉塞により発現する梗塞巣を抑制した. このとき、現在、t-PAと比べて出血傾向が低いことも明らかとなった.また, MCA閉塞処置後のADAMTS13K.O.マウスはW.T.に比べて脳内HMGB1濃度が高く,強い炎症が起きていることを確認した. よって, 脳梗塞時, ADAMTS13は脳保護的に作用することが明らかとなった. 脳梗塞に対して劇的な治療効果をもつt-PAは,脳出血のリスクを伴うため,治療可能時間が発作後3時間以内と限定的である.ADAMTS13はt-PAに比べて, 脳出血のリスクが低く,治療投与開始時間が長い脳梗塞治療薬となることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は, ADAMTS13が脳梗塞に対して治療効果を示すことを明らかにした. また, ADAMTS13は, 劇的な治療効果をもつt-PAに比べて, 脳出血のリスクが低いことが示唆された. この成果は, ADAMTS13が治療開始可能時間の長い脳梗塞治療薬となることを示唆した.次年度以降, ADAMTS13を利用した新たな脳梗塞治療法を見出すための基盤となった.
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今後の研究の推進方策 |
本年度, 明らかにしたADAMTS13の脳梗塞に対する治療効果を詳細に解析する. ADAMTS13とt-PAの差別化を更に追及するとともにADAMTS13の作用機序を解析する. ADAMTS13は,血管内皮細胞,ミクログリア,マクロファージ等のスンカベンジャー受容体のCD36と結合することが知られている. また, 本年度の成果より, MCA閉塞処置後のADAMTS13K.O.マウスはW.T.に比べて脳内HMGB1濃度が高く,強い炎症が起きていることが明らかとなった. よって, HMGB1,CD36を中心とした炎症反応とADAMTS13の関わりを検出する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は, 今回, ADAMTS13の脳梗塞に対する治療効果を詳細に解析する. 本年度得られたADAMTS13が脳梗塞に対して治療効果を示すことを基盤とし, 実験を行う. これらの実験は, 研究代表者の所属機関である福岡大学に設置されている現有設備にて, 遂行可能であるため, 設備備品については特に使用しない, 本年度研究経費として, 消耗品費900千円を使用する予定である. 研究計画のADAMTS13とt-PAの差別化やADAMTS13の作用機序を解析するために必要となる分子生物学研究試薬, 細胞実験研究試薬に500千円, 実験動物の購入(餌代などを含む)に200千円計上した. これらの経費により, 平成24年度に本件研究を遂行する予定である. この他, 研究成果発表費用に旅費, 論文の校閲費および印刷費として, 200千円を使用する予定である.
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