研究課題
内因性生理活性物質ADAMTS13(a disintegrin-like and metalloprotease with thrombospondin type 1 motifs 13)は、血液凝固の標的であるフォン・ヴィレブランド因子(VWF)を切断するメタロプロテアーゼである。本研究課題は、ADAMTS13が脳梗塞発症時において果たす役割の解明とADAMTS13を利用した治療法の確立を目的としている。本年度は、ADAMTS13による脳梗塞改善作用の本体を調べるために構造中に含まれるADAMTS13(34-688)およびthrombospondin type-1(Tsp-1)が脳梗塞を改善するかについて検討した。実験は、ddY雄性マウスに4時間の中大脳動脈(MCA)閉塞処置を行い、ADAMTS13、ADAMTS13(34-688)およびTsp-1を4時間のMCA閉塞後に尾静注した。その結果、いずれも脳梗塞体積を有意に減少させた。中でも、ADAMTS13(34-688)が最も強力な改善作用を示した。次に、Tsp-1の治療可能時間を検討した結果、Tsp-1は、MCA閉塞後2時間後の投与では改善したが、4時間後投与では改善しなかった。以上の結果から、ADAMTS13による脳梗塞保護効果には、ADAMTS13(34-688)およびTsp-1の関与が考えられた。また、VWF切断に必要な領域であるADAMTS13(34-688)が最も強力な改善作用を示したことから、この領域がADAMTS13による脳保護作用に重要であることがわかった。さらに、Tsp-1は抗炎症作用を有することを明らかにしているので、ADAMTS13による脳保護作用には、血小板凝集抑制作用に加えて抗炎症作用を有していることが示唆され、ADAMTS13はより安全で有益な脳梗塞治療薬となりうる可能性を示した。
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J Thromb Haemost.
巻: 12(4) ページ: 505-514
10.1111/jth.12511.