研究課題/領域番号 |
23590655
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
武田 晴治 北海道大学, 保健科学研究院, 特任助教 (80374726)
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研究分担者 |
千葉 仁志 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (70197622)
末岡 和久 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (60250479)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | リポ蛋白質 / 酸化 / 一粒子 / 原子間力顕微鏡 |
研究概要 |
LDLは健常者の血清から超遠心法により得た。酸化LDLは硫酸銅を添加して37℃で数時間反応させることにより得た。保存の目的でLDLに対して抗酸化物質を添加したLDLの試料も作製した。 LDLの基板への固定化方法の検討を行った。金コート水晶振動子にアミノデカンチオール(NH)、メルカプトデカノイック酸(COOH)、メルカプトデカノール(OH)の3種類の自己組織化膜を作製してLDL及び酸化LDLの吸着をQCMで測定した。その結果、NH<<COOH<OH膜の順に LDL、酸化LDLともに吸着することがわかった。また、酸化LDLのほうがLDLより吸着量が多いことがわかった。LDLがカルボン酸など負イオン以外に、水酸基を含む膜に吸着することも判明した。 LDLを修飾金電極基板に固定化した後に、酸化するどうかについて電気化学測定器を用いて検討を行った。硫酸銅濃度、酸化時間に依存して正方向への電位が変化する結果が得られた。LDLを溶液中で酸化した結果と差は観察されず、基板への固定化によりLDLの酸化の受けやすさが大きくすることはないことが示された。 LDLの単純化したモデルとして複数の脂質から形成されるリポソームを作製した。粒子サイズの異なるリポソームを作製した。金蒸着したマイカ基板上にOH膜を作製してLDLまたはリポソームを固定化した。洗浄後、基板を乾燥して大気中、AFMで形状測定した。文献値としてLDLの平均直径は20 nmであることが知られているが、平均50nm程度の直径の粒子として観察され高さは2 nm程度の高さになっていることがわかった。同時にケルビン測定で固定化された個々の粒子の電位を測定した。酸化LDLはLDLよりも正に帯電している傾向が観察された。LDLの粒子径、電位ともにほぼ正規分布するのに対して、酸化LDLの場合、粒子径、電位ともにバラつきが大きいことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実施計画には、1). LDLの金基板への固定化条件の検討、2). 1粒子レベルでの電位測定、3).個々のLDL粒子のリアルタイム酸化プロセス観察と剛性測定、の3項目を記載した。1). 固定化条件の検討について; LDLを固定化するための自己組織化膜の最適な条件が決定した。自己組織化膜はメルカプトデカノールが効果的で、固定化濃度(2μg/ml)、時間(3分)など、一粒子レベルでの観察に必要な基板への固定化の条件が最適化された。達成100%2). 1粒子レベルでの電位測定; AFMを用いて大気中では未酸化LDLおよび金属酸化したLDLの一粒子レベルでのイメージ像と同時に個々の粒子の電位像が得られている。LDL粒子の平均的な酸化状態の測定として、当初の計画ではゼータ電位測定を予定していたが、CNT電極を用いての電位変化測定を行った。 個々粒子の電位測定の結果の平均と、平均な電位変化測定の結果は矛盾しない結果が得られている。TBARS法とAFMによる一粒子レベルでの解析結果も相関がある結果が得られている。溶液中での測定はイメージの測定以外では結果が得られていないが、電気化学測定器をAFMに接続することができたことより、溶液中でのフォースカーブの測定と電気化学測定が可能な状態である。この部分が予定よりも遅れている。達成度75%3). 個々のLDL粒子のリアルタイム酸化プロセス観察と剛性測定; 液中での基板に固定化した個々のLDLの酸化プロセスの測定は、金/mica基板の劈開面に溶液が入り込み基板が浮き上がってしまい測定場所が変化することと、測定中に探針が汚れてしまうこととにより進行が遅れていた。mica劈開面を樹脂で固定化すること、または、蒸着した金膜をシリコンまたはガラス基板に写し取ることで、その影響は軽減された。現在、測定中で今後は進行すると考えている。達成度50%
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今後の研究の推進方策 |
前年度の遅れの分を含めて記載している。(各段落の数字は計画書記載の番号)2). 1粒子レベルでの電位測定; 大気中でのLDLおよび酸化LDLの測定の再現性を確認する。各酸化状態でのLDLの高さなど形状と電位分布の統計的処理を行う。溶液中でのLDLおよび酸化LDL測定はイメージ測定と同時にLDL表面に現れる過酸化脂質の酸化還元電流の測定を試みる。(予定実施期間3ヶ月)3).および4). 個々のLDLカイロミクロン、VLDL粒子のリアルタイム酸化プロセス観察と剛性測定; まず、37℃でカイロミクロン、VLDL、LDLの形状を測定する。次に硫酸銅を添加して酸化による形状の影響を測定する。また、形状測定と平衡して、各酸化状態でフォースカーブ測定を行い、リポ蛋白質の剛性の変化を測定する。カイロミクロン、VLDL は血清から超遠心法により分離する。(予定実施期間5ヶ月)5). マクロファージ泡沫化するリポ蛋白質の物理的性質を決定する。LDLが酸化されるに従い粒子の大きさの異なるLDLが存在することが判明したので、酸化LDLをフィルターやゲルろ過法などを利用して大きさにより分類する。分類したLDLが血小板の凝集作用があるかどうかについて検討を行う。冠動脈疾患はマクロファージの泡沫化や血小板凝集など様々な要因が相乗的に関与していると考えられ、今年度は血小板凝集の有無を検討したい。(予定実施期間4ヶ月)
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次年度の研究費の使用計画 |
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