研究課題/領域番号 |
23590655
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
武田 晴治 北海道大学, 保健科学研究院, 特任准教授 (80374726)
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研究分担者 |
千葉 仁志 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (70197622)
末岡 和久 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (60250479)
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キーワード | 低比重リポタンパク質 / 酸化 / 硬さ / 一粒子 / 原子間力顕微鏡 / 表面電位 |
研究概要 |
LDLまたは酸化LDLを金膜上に吸着させて、洗浄、乾燥後、その吸着跡の表面電位を測定した。LDLの酸化の進行に従い、表面電位が低下することが判明した。吸着跡の体積を考慮すると、乾燥時にLDLが崩壊していると考えられ、個々の粒子の表面電位を評価することは難しいと判断した。そこで、LDL粒子の硬さの変化について検討した。 micaをシランカ剤で修飾した基板にLDLを固定化する方法を試みたが、シランカ剤の会合体が形成されることがあり、LDLとの区別が困難となった。そこで、mica上にエピタキシャル成長させた金薄膜を作製し、LDLおよび酸化LDLを固定化後、溶液中で、一粒子レベルで硬さの評価を行った。LDLの弾性率を解析したところ、0.8から2 MPaの範囲であった。硫酸銅による酸化1時間後では0.8から2 MPaの範囲の粒子は減少して0.5Mpa以下のものが多く観察された。酸化後3時間のものは70%以上の粒子で0.5Mpa以下となり、酸化が進行するに従いLDLの粒子が柔らかくなった。また、AFMのトポ像では酸化LDLでは大きさの異なる粒子が観察された。そこで、ゲル濾過カラムにより酸化LDLに含まれる粒子サイズについて検討し、LDLより小さい分子群、ほぼ同じサイズの粒子群、大きい粒子群の3つの分画を得た。LDLとほぼ同サイズの粒子は硬さ分布に広がりがあり、LDLより大きい粒子群は柔らかいことが判明した。酸化によりLDLが柔らかくなる原因として、LDLに含まれるアポタンパク質の分解の可能性が考えられるが詳細については今後の課題となる。 LDLの酸化状態は粒子により異なっていることが示唆され、酸化進行度合いが均一でないと考えられる。非アルコール性肝炎(NASH)や冠動脈疾患状態のLDLの硬さの分布が変化している可能性が考えられ,病態の予測などの状態の評価に結び付く可能性があると考えられる。
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