研究課題/領域番号 |
23590659
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鈴川 和己 筑波大学, 医学医療系, 講師 (50334066)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | DNA二重らせん切断 / DNA損傷修復 / H2AX / 末梢血白血球 / 放射線 |
研究概要 |
まず研究代表者自身の末梢血を採取した後、白血球を分離し、放射線照射後白血球をホルムアルデヒドを用いて固定した。その後蛍光色素FITCで標識された抗H2AX抗体を反応させ、フローサイトメトリーによるDNA二重鎖切断の間接的な観察を行った。放射線照射量とリン酸化H2AX陽性細胞比率の間には良好な相関関係がみられた。 次に放射線照射によるDNA二重鎖切断とその後の修復を観察するための至適条件を検討した。ほぼ100%の細胞で有意にH2AXがリン酸化したことを確認できるのに必要な線量は4Gy以上であることが判明した。また経時的にリン酸化H2AX陽性細胞数の変化を観察したところ、放射線照射後1~2時間でピークとなり、6時間までほぼ直線的に減少することが明らかになった。この結果によりリン酸化H2AX陽性細胞比率を観察するタイミングを放射線照射後 1,(2,) 4, 6時間後とした。 施設内倫理委員会で承認された手順に基づき、同意を得た後に健常人から末梢血を得て、同様の検討を行った。得られたデータを解析し、健常人末梢血白血球における経時的変化を解析した。 治療後外来通院中の造血器腫瘍患者から同意を得た後、診療に用いられた血液検査検体の残余血液から白血球を分離し、同様の検討を行った。その結果健常人に比較して患者ではリン酸化H2AX陽性細胞比率の減少程度が少ないことが明らかとなり、治療後の造血器腫瘍患者では健常人に比較して、DNA二重鎖切断の修復割合が少ないことが示唆される結果が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
採択された研究計画書における平成23年度計画に記載した健常人末梢血白血球を用いた放射線照射によるDNA二重鎖切断とその修復能力の検討について、6Gyよりも少ない放射線量を用いることができることが明らかになり、またH2AXの脱リン酸化過程の観察も可能となった。健常人については12名の解析を終了しており、今後追加し解析検体数を増やす予定である。 これに加え、造血器悪性腫瘍患者の血液についても解析を行うことができ、当初の計画以上の進展が得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
解析検体数を増やして更なる解析を進める。 これまでは治療後の造血器腫瘍患者について検討しているが、DNA修復能の低下が治療前からあったのか、抗がん剤投与などの治療による二次的な変化なのかを明らかにするために、治療前の造血器腫瘍患者由来の末梢血を用いた解析を進めていく。 リン酸化H2AXの脱リン酸化作用を持つ遺伝子はこれまで数個同定されている。その中でWIP1遺伝子は特に癌化に関連することを示唆する報告が相次いでおり、この遺伝子発現量変化と健常人あるいはがん患者末梢血白血球におけるH2AX脱リン酸化との関連を検討していく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
解析に必要な抗体をはじめとする研究試薬を購入する。またH2AXの脱リン酸化酵素遺伝子発現を評価するための定量PCR関連試薬購入も予定している。
|