研究概要 |
本年度は、マウスを用い、DNA二重鎖切断に対する修復能の加齢による低下が、ヒトとは異なる生物種でもみられる共通の変化であるか検討することとした。また、γH2AXを脱リン酸化する酵素の遺伝子発現に着目し、これらの放射線照射前後における発現変化や、放射線未照射時における発現量が加齢により変化するか検討を行うこととした。 まず放射線照射によるγH2AX量変化について評価方法の検討を行い、最もばらつきが小さく、他の論文でも用いられているgeometric meanを採用することにした。次に若齢マウスリンパ球に放射線を照射後、1時間でのγH2AX量(geometric mean値)を測定した。γH2AX量は線量増加とともに増加し、2Gy以上でほぼ横ばいとなった。 若齢マウスリンパ球に2Gy放射線照射後γH2AX量(geometric mean値)の経時的変化を観察した。γH2AX量は1時間で最大となり、6時間後有意に減少した。若齢マウスと高齢マウス(平均61週齢)のγH2AX減少率を比較すると、全ての線量において高齢で減少率が低下する傾向がみられたが、4Gyにおいてのみ、統計的に有意な低下が認められた。 放射線照射前後の遺伝子発現量の変化率(放射線照射後発現量/照射前発現量)を比較すると、γH2AXを脱リン酸化する酵素として着目した12の遺伝子のうち10種では、若齢マウスで放射線照射によって発現の誘導が見られるのに対し、老齢マウスでは変化なし、もしくは低下していた。その中でもPPP2CA, PPP6R2, PPP4R3B, PPM1Dでは、老齢マウスと若齢マウスの変化率に有意差がみられた。また、定常時の遺伝子発現を比較してみると、PPP4Cのみ若齢マウスに比べ高齢マウスで高値を示した。
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