研究課題/領域番号 |
23590661
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
角野 博之 群馬大学, 医学部, 講師 (10375579)
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研究分担者 |
村上 正巳 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30241871)
倉林 正彦 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00215047)
中原 健裕 群馬大学, 医学部, 医員 (00599540)
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キーワード | 内科学 / 臨床検査医学 / 動脈硬化 / 生理機能 / バイオマーカー |
研究概要 |
動脈硬化進展の各病期には血管障害を反映する様々な因子(バイオマーカー)が作用している。血中バイオマーカーには空腹時血糖(FBS)、インスリン、HbA1c(JDS値)、脂質、尿酸、高感度C反応性蛋白(CRP)、酸化ストレス度(d-ROMsテスト)、抗酸化力(BAPテスト)、窒素酸化物(NOx)などがある。一方、血管の動脈硬化進展の初期~重症期の各病期は、順に①初期:血流依存性血管拡張反応(flow-mediated vasodilatation: FMD)、②動脈硬化中間病変形成期:臓足首血管指数(CAVI)、③中膜内膜肥厚期:頸動脈内膜中膜複合体厚(intima-media thickness: IMT)などの3種の臨床的動脈硬化検査法により評価可能である。 本研究は、糖尿病患者及び高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病患者、健常者に対して上記の3種の臨床的動脈硬化検査及び血中バイオマーカーの測定を同時に行い、糖尿病患者における動脈硬化進展の各病期を反映する至適バイオマーカーを探索するために開始された。今年度までに計104例を募集し、検査を行った。FMDは6%未満を血管内皮機能障害とし、動脈の硬化度はCAVIの値が8以上を動脈硬化度高値とし、頸動脈IMTは左右総頸動脈の最大肥厚部を計測し、1.1mm以上を頸動脈内膜中膜肥厚とした。その結果、①動脈硬化初期である血管内皮機能障害にはインスリン及びNOxの高値が関与していた。②動脈硬化中間病変形成期である動脈硬化度にはTGの高値が関与していた。③中膜内膜肥厚期である頸動脈内膜中膜肥厚にはHbA1cの高値が関与していた。 今後は、より多くの症例数を集め、より詳細に動脈硬化進展の病期を反映する至適バイオマーカーを探索する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は研究対象者である2型糖尿病患者を200症例募集することを予定していたが、予定数に達しないため高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病患者及び健常者にまで研究対象者の適応範囲を広げ、研究対象者の募集を行った。研究対象者数の不足については、大学内および近隣の地域への宣伝活動が不十分であったことが原因と考えられる。この点を踏まえ、来年度はより多くの研究対象者を募集する予定である。 また、当初予定していた64列のマルチスライス心臓CTによる冠動脈の狭窄率・石灰化の測定検査は、研究対象者の検査費用負担が多くなるために検査項目から除外した。
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今後の研究の推進方策 |
研究対象者数が目標に達していないので、大学内および近隣公民館などへのポスター掲示、講演会時の宣伝、近隣の地域住民への健康教室時の宣伝などにより可能な限り多くの追加の対象者を募る予定である。 今年度に引き続き、追加対象者に対しても早朝空腹時に採血し、同日、血管動脈硬化進展の3病期を反映するFMD、PWV、頸動脈IMTなどの臨床的動脈硬化検査を行う。採血にて空腹時血糖(FBS)、インスリン、HbA1c(JDS値)、脂質、尿酸、高感度C反応性蛋白(CRP)、酸化ストレス度(d-ROMsテスト)、抗酸化力(BAPテスト)、窒素酸化物(NOx)、細胞接着分子、甲状腺ホルモン、男性ホルモン、女性ホルモンなどのバイオマーカーを測定する。また、試薬を購入し、血中のフリーラジカル、サイトカインなどのバイオマーカーの測定を行う。 得られたデータを解析し、①動脈硬化初期である血管内皮機能障害と血中バイオマーカーとの関係、②動脈硬化中間病変形成期である動脈硬化度と血中バイオマーカーとの関係、③中膜内膜肥厚期である頸動脈内膜中膜肥厚と血中バイオマーカーとの関係を求め、動脈硬化進展の3つのそれぞれ各病期を反映する至適バイオマーカーの探索を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費については、エライザー・アッセイ試薬を5キット購入し、バイオマーカーの測定を行う予定である。 まず1つ目は、d-ROMsテスト(FREE)試薬(50回測定用)をウイスマー社から1キット購入する。当教室の実験室において、今年度購入したFREE carpe diem(フリーラジカル解析装置;ウイスマー社製)に、d-ROMsテスト(FREE)試薬を用いて血中の酸化ストレス度を測定する。血中の酸化ストレス度の測定は、血液における、活性酸素・フリーラジカルによる代謝物(ヒドロペルオキシド)を分析測定し、数値化したものである。 2つ目は、高分子アディポネクチン測定試薬(200回測定用)を富士レビオ社から1キット購入する。当大学の検査部の中央検査室において、LUMIPULSE PrestoII(富士レビオ社製)に、高分子アディポネクチン測定試薬を用いて血中の高分子アディポネクチンを測定する。 旅費については、仙台市で開催予定の日本内分泌学会学術総会、神戸市で開催予定の日本臨床検査医学会学術集会、東京都で開催予定の日本循環器学会学術集会などに参加するための旅費として使用する予定である。これらの国内の学術集会に参加し、得られた研究成果の発表を行い、また他大学の研究者との情報交換を行い、さらに最新の話題や革新的な研究成果の発表を聞く予定である。
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