研究概要 |
最終年度である平成25年度は同意の得られた糖尿病の他に脂質異常症、高血圧症を加えた生活習慣病患者を追加募集し、対象者数は計131例(糖尿病19例、脂質異常症105例、高血圧症67例)に達した。対象者に対して、動脈硬化進展の初期~重症期の各病期に対応する3種の臨床的動脈硬化度[順に初期:血流(内皮)依存性血管拡張反応(FMD)<6%、動脈硬化中間病変形成期:心臓足首血管指数(CAVI)≧9、中膜内膜肥厚期:頸動脈内膜中膜複合体厚(IMT)≧1.1mm]及び血中バイオマーカー[空腹時血糖、インスリン、HbA1c(NGSP値)、脂質、尿酸、CRP、酸化ストレス度(d-ROMsテスト)、抗酸化力(BAPテスト)、窒素酸化物(NOx)、BNP、ICAM-1など]を同時に測定し、3種の臨床的動脈硬化度それぞれを従属変数、バイオマーカーを共変量として多重ロジスティック回帰分析を行った。 結果は、高LDL-C(≧140mg/dL)(ハザード比(HR)2.257, 95%信頼区間(CI)1.055-4.828, P<0.05)、高ICAM-1(≧502ng/mL)(HR2.313, CI1.102-4.854, P<0.05)はFMD低下と関連した。高CRP(≧0.1mg/dL)(HR4.012, CI1.156-13.931, P<0.05)、低BAP(<2200μmol/L)(HR10.326, CI2.518-42.356, P<0.001)、低NOx(≦42.5μmol/L)(HR4.273, CI1.133-16.110, P<0.05)、高ICAM-1(HR7.656, CI1.901-30.839, P<0.01)はCAVI高値と関連した。高HbA1c(≧6.3%)(HR3.935, CI1.337-11.586, P<0.05)、高BNP(>18.4pg/mL)(HR2.972, CI1.120-7.887, P<0.05)、高ICAM-1(HR3.511, CI1.258-9.794, P<0.05)はIMT肥厚と関連した。 以上より、糖尿病患者を含めた生活習慣病患者における血管動脈硬化進展の病期は、高LDL-C、高ICAM-1があれば初期であり、高CRP、低BAP、低NOx、高ICAM-1であれば動脈硬化中間病変形成期であり、高HbA1c、高BNP、高ICAM-1であれば中膜内膜肥厚期である可能性が示唆された。今後、更なる検討により、これらの結果を確認していくことが必要であると考えられる。
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