研究課題
1.胃型肺腺癌の病理組織像・臨床像の解析抗胃腺粘液細胞ムチン抗体HIK1083を用いた免疫染色により、HIK1083陽性の胃粘液細胞の表現型を示す胃型肺癌症例を収集し、病理組織像の特徴とEGFR変異およびK-Ras変異の有無を検討した。胃型肺腺癌において、HIK1083陽性の胃腺粘液細胞型の腺癌細胞の割合は様々であった。胃型腺癌組織におけるHIK1083陰性の癌細胞はその細胞形態およびMUC5AC陽性所見から、胃の表層粘液細胞型の腺癌細胞である可能性が示された。また、胃型肺腺癌には種々の割合にMUC2陽性の腸杯細胞型の腺癌細胞が混在していた。胃型肺腺癌の組織型としては、従来報告されていた気管支肺胞上皮型に加え、乳頭状型や腺房型を示すものがあることが明らかにされた。これらの胃型肺腺癌はいずれもTTF1陰性であり、EGFR変異は認められず、高頻度にK-Ras変異が認められた。2.分泌液中のTFFの定量のためのELISA系を確立した。3.胃ムチンを発現する腺癌の症例報告 眼瞼のアポクリン汗腺であるMoll腺は胃腺粘液細胞ムチンのコア蛋白であるMUC6陽性であるがHIK1083反応性糖鎖が陰性であり、他のアポクリン汗腺およびエクリン汗腺はいずれも陰性であることを見いだした。この基礎的検討を基に、従来、眼瞼発生の印環細胞癌として報告されてきた腺癌がMoll腺類似のムチンを発現していることを明らかにし、その症例報告を行った(American Journal of Dermatopathology, in press)。
2: おおむね順調に進展している
1.胃型肺癌の症例収集が順調に進んでおり、そのEGFR変異およびK-Ras変異の解析が順調に進んでいる。2.分泌液中のTFFの定量のためのELISA系を確立した。3.眼瞼原発の印環細胞癌とされている腺癌組織におけるMUC6を明らかにし、正常汗腺組織の免疫組織化学的検討による表現型解析との比較によりそのMoll腺起源を示した。
1.胃型肺癌の症例収集を更に進め、胃型肺癌における胃腸上皮に発現している転写因子やTFFの発現様式を検討して、胃型肺腺癌のより有用な病理組織診断マーカーを探索する。2.胃型病変(胃型肺腺癌、膵臓IPNMおよびPanIN、子宮頸部LEGHおよび悪性腺腫)におけるTFFの発現様式と胃型病変由来の分泌物中のTFF測定の診断マーカーとしての有用性を検討する。
直接経費の請求額1,300,000 円は物品費1,100,000円[胃型肺癌の遺伝子解析関連(kRas及びEGFR変異解析)400,000円、胃型病変の病理・組織化学的解析関連450,000円、胃型病変の分泌部TFF測定関連250,000円)]、国内旅費50,000円、人件費・謝金0円、その他0円、研究分担者への配分150,000円(奥村伸生100,000円、本田孝行50,000)を予定している。
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