研究概要 |
膵癌の前癌病変とされる膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)を免疫組織化学的表現型に基づいて分類し、その臨床的・病理組織学的特徴を解析した。特に、胃型と腸型のIPMNの比較を中心に解析を行った。33症例のIPMN手術切除材料を対象として、消化管上皮に発現する以下のマーカーの免疫染色を行った。胃表層粘液細胞マーカー(MUC5AC)、胃腺粘液細胞マーカー(MUC6、GlcNAcα1 → 4Galβ → R)、胃幽門粘膜・十二指腸上皮細胞マーカー(PDX1)、腸上皮マーカー(MUC2、CDX2)、小腸上皮マーカー(CPS1)、大腸上皮マーカー(SATB2)。MUC2の発現により、IPMNは胃型 (n=17)、腸型 (n=8)、胃腸混合型 (衝突型=7, 混成型=1)に亜分類された。胃型IPMNは胃腺粘液細胞マーカー(MUC6およびGlcNAcα1→4Galβ→R)と胃幽門粘膜・十二指腸上皮細胞マーカー(PDX1)を発現しているが、腸上皮マーカー(MUC2およびCDX2)はほとんど発現していないことから胃幽門粘膜上皮の形質を有していると考えられた。腸型IPMNは腸上皮マーカー(MUC2およびCDX2)と小腸上皮マーカー(CPS1)を発現しているが、大腸上皮マーカー(SATB2)とGlcNAcα1→4Galβ→Rは発現していないことから、小腸粘膜上皮の形質を有していると考えられた。更に、腸型IPMNにはPDX1が発現していることから、腸型IPMNは近位小腸(十二指腸)上皮の形質を有していると考えられた。胃型IPMNと腸型IPMNの組織発生については、1)年齢の差が認められないこと、2)病変の主座が違うこと、3)胃腸混合型においては衝突型が多いこと、また、4)GlcNAcα1→4Galβ→Rの発現が腸型では確認できないこと、から両者は組織発生が異なると考えられた。
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