研究課題/領域番号 |
23590666
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
飯野 和美 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (90402263)
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研究分担者 |
沖 隆 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (20169204)
前川 真人 浜松医科大学, 医学部, 教授 (20190291)
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キーワード | 悪性褐色細胞腫 / メチル化解析 / メチル化特異的PCR / プロテオーム解析 |
研究概要 |
本研究は、良性・悪性褐色細胞腫組織を材料としたゲノム、エピゲノム、トランスクリプトーム、およびプロテオームの解析を通して、本症の癌抑制因子や転移関連遺伝子について分析し、それらを臨床像と照らし合わせることにより診断・予後予測・悪性化阻止等の治療に反映できる情報を得ることを目的としている。さらに、本症以外の腫瘍一般における潜在的がん転移能力のもつ意味やそれが顕性化するメカニズムの解明、早期診断法を確立することを目的としている。 平成23年度から24年度にかけて、ホルマリン固定パラフィンブロックサンプルよりDNAを抽出した 9症例・12サンプル(悪性褐色細胞腫3例{各症例につき原発巣転移巣2サンプル}+12年以上転移がみられない良性褐色細胞腫3例+経過観察中で良性か悪性か不明の腫瘍3例)につき全ゲノムメチル化解析を行った。全症例について書面でインフォームドコンセントを得ている。 悪性褐色細胞腫2例の同一症例内での原発巣および転移巣の全ゲノムメチル化解析結果から、転移に関連してメチレーションに変化が生じる可能性のある候補CpG領域を7つに絞り込んだ。(メチル化:3 CpG領域 脱メチル化:4 CpG領域)。絞り込む方法としては各症例のメチル化・脱メチル化変化率の高いCpG領域Top20と、2症例で共通してメチル化変化率0.45以上であったCpG領域を有意メチレーション変化CpG領域として取り上げた。現在この7つのCpG領域について良性腫瘍・および経過観察腫瘍(各7症例)を含めたより多くのサンプルについてMethylation specific PCR法を用いたメチル化解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度までに、解析を予定していた全サンプルについて全ゲノムメチレーション解析をおこなうことができた。しかし、次のステップであるメチレーション特異的PCR(MSP)については、特にそのプライマーの設計に多くの時間を費やしている。MSPではCGコンテントの多い部分を増幅する特殊なプライマーの設計が必要であり、さらに一つのCpG領域について非メチル化・メチル化の二つのプライマーを設計する必要がある。このプライマー設計実験が難航している理由の一つである。現在MSPを鋭意実験している最中であり、この結果を踏まえ候補CpG領域をさらに絞り込むことができれば、その結果を用いて、今後研究の展開が期待できると考えられる。 さらに、今回悪性化に伴うメチレーションをテーマにしていることから、悪性化・転移形質獲得に伴い遺伝子レベルでの変化が生じていないことを確認する必要がある。凍結腫瘍組織(原発巣と転移巣)から抽出したRNAを用いた検討が有用であるが、手元にある凍結組織サンプル数が限られており、パラフィン組織を材料としたDNAエクソームシークエンスを用いて検証するしか方法がなく、さらに費用を充てる必要があり、今後の研究方法を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
①腫瘍の悪性化に伴うメチレーション解析;これまでの研究で、同一症例転移巣・原発巣の全ゲノムメチル化解析結果から絞られている 転移・癌基質獲得に関与する候補メチル化CpG領域について、さらに症例数を増やしたMethylation specific PCR法を行い候補CpG領域を絞り込む。その下流に存在する悪性化抑制遺伝子を絞り込む。候補遺伝子につきプロファイリングを行う。 ②原発巣と転移巣組織を材料としたエクソームシークエンスで転移形質獲得に伴う遺伝子異常の変化の有無がないことを確認する。 ③摘出腫瘍組織からタンパク質を精製分離し発現量を解析する。発現量の異なるタンパクを質量分析にて同定する。腫瘍組織内における、細胞増殖、血管新生、細胞接着、組織浸潤、関連蛋白の発現を検討する。 ④プロテオローム解析結果をふまえ、各腫瘍組織から得られたtotal RNAを材料とし、各種癌関連遺伝子チップ、必要があればhuman Full Genome チップを用いて、oligo DNA Microarrayを行い遺伝子発現のプロファイリングを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度から繰り越され、現在行っているMSP解析に関連した試薬・消耗品に経費を充てる予定である。現在次年度使用額は12334円であり、この経費と平成25年度請求研究費と併せた経費を用いて、上記研究を行う予定である。 今後、研究成果で絞られる悪性化候補遺伝子について遺伝子プロファイリングとその機能解析を計画しており、アレイによる定量、遺伝子導入実験、抗体を用いた免疫組織学的実験なとの各種実験に関連したシラク・消耗品。動物などに研究費を使用したいと考えている。 さらに、今年度は遅れているプロテオーム解析に着手したいと考えており、凍結組織からのタンパク質生成分離・質量分析などに必要な試薬・消耗品に経費を使用する予定である。
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