研究課題/領域番号 |
23590668
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
登 勉 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60106995)
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キーワード | MTAP / 酵素欠損 / フローサイトメトリー / DNAメチル化 / 個別化医療 / コンパニオン診断薬 |
研究概要 |
本研究の対象となるプリン代謝酵素Methylthioadenosine phosphorylase(MTAP)は、全ての正常細胞及び正常組織では活性を認めるが、小児急性白血病、成人T細胞白血病、肺癌、脳腫瘍などで高頻度に欠損している。この酵素はプリン・サルベージ経路を介したアデニン・ヌクレオチドの供給に関与しているので、酵素欠損癌細胞では、プリン新生合成阻害剤に感受性である。一方、正常細胞は、癌患者血中に存在するMTAPの基質Methylthioadenosine (MTA)を利用してアデニン・ヌクレオチドを産生する。従って、癌細胞はプリン欠乏になり死滅するが、正常細胞は生き残る。本研究では、より簡便なフローサイトメトリー(FCM)による白血病での酵素欠損診断法を開発し、臨床応用のための基礎的検討を行うことを目的とする。昨年度実施した抗MTAP抗体のエピトープマッピングに続いて、FCMによる酵素欠損診断法の確立に取り組んだ。本酵素の主たる細胞内局在は細胞質であり、細胞表面抗原の検出に比してpermeabilization操作が必要であり、技術的な工夫を要する。当初の目的であるFCMを用いた白血病細胞のMTAP酵素欠損診断については、permeability試薬としてIntraPrep(Beckman Coulter)を用いて予備実験を実施したところ、抗MTAP抗体で染色される細胞集団と染色されない細胞集団を分離できた。酵素欠損の原因となるプロモーター・メチル化検出法についても検討し、高速液体クロマト法によるDNAメチル化検出法を確立し、特許申請した。 本研究の成果は、分子標的治療とコンパニオン診断薬の一体化開発に繋がることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MTAP酵素の細胞内局在が細胞質であり、細胞表面抗原の検出に比してpermeabilization操作が必要である。最も肝要であるpermeability試薬を使って技術的課題をほぼ解決した。更に、酵素欠損機序の1つであるDNAメチル化の簡便な解析方法についても取組み、特許申請した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に確認したpermeability試薬を用いて、FCMによる酵素欠損診断法を確立する。また、DNAメチル化機序による酵素欠損細胞を用いて、FCM法とDNAメチル化を相関させる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度の研究費予算は110万円である。その費目別内訳は、物品費50万円、旅費30万円、その他30万円である。物品費は、細胞培養用試薬類、プラスチック製品、そして、FCM用試薬類の購入に使用する。旅費は、国内学会出席・発表を計画しているので、その出張のための旅費である。その他は、論文作成のための費用として使用する。
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