研究課題/領域番号 |
23590669
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
松本 明 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (80181759)
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研究分担者 |
武地 一 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10314197)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 軽度認知障害 / 血漿バイオマーカー / 立体構造 / タウペプチド / モノクロナル抗体 / 補体成分 |
研究実績の概要 |
前年度までの研究解析成果により、軽度認知障害(MCI)の状態にある人の血漿バイオマーカー候補として、タウ蛋白の一部のエンドペプチダーゼ消化ペプチドのC端側断片立体構造が、最も有力な候補物質として確認された。 本年度はこの候補物質について詳細な構造解析とモノクロナル抗体特異性解析を行った。 前者では受託解析によりコンピュータ上で作成した本候補物質の構造に対する反応性・結合性物質の探索・解析を行った。具体的にはドッキングシュミレーション用ソフトウエアを駆使して、血液中の既知エンドペプチダーゼとの結合性、他物質との結合性を解析し、血液中で当該構造物のどの部分が実際に暴露されており、どの部分が遮蔽されているかを推定した。 後者では上記結果を踏まえ、既に多く作成されている当該物質に対する立体構造認識モノクロナル抗体クローン群について、その認識抗原決定基の解析、MCI者血液中での結合物質の有無の検討を行った。 以上解析の結果、(1)候補エンドペプチダーゼが当該立体構造に結合して各抗体との結合性に影響を及ぼしている確率は無視できる程度に低いこと、が明らかになり、更に(2)血液中物質で当該立体構造に結合し、確率的に有意に抗体結合性を修飾する生体成分としてC4d(主要な補体成分C4の断片)が同定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MCIの血漿バイオマーカーとして、タウペプチドのうち特定のエンドペプチダーゼ断端(C端側)の立体構造が、最も有力な候補物質として同定されるまでは比較的順調に進捗した。 しかし、血漿を用いたMCIに対する特異性解析、感度解析はいずれの抗体クローンも実際にそのまま診断手法として応用するには十分ではなく、概要で記した様に候補立体構造のin silico解析など特殊な技術的対応を行わなければ突破口がなく、それには当初予想した以上の時間と研究資源の追加を必要としたため。
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今後の研究の推進方策 |
現在解析に使用している血漿検体(正常群およびMCI群)について、今年度の解析で明らかになった修飾要因(特定の補体成分など)について、次年度は検体ごとの解析を行い、既存のモノクロナル抗体の中から感受性・特異性とも最も優れたクローンを解明し、必要によっては修飾した抗原を用いた抗体作製をおこない、バイオマーカーとしての至適化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の解析結果から、本研究目的であるMCIの血液バイオマーカーとしての立体構造認識モノクロナル抗体の選択・確立のため、さらに追加解析すべき内容が明らかになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
(1)血液中物質で当該立体構造に結合し、確率的に有意に抗体結合性を修飾する生体成分としてC4dが同定されたが、解析対象の全血漿検体(正常例およびMCI例)について、C4dの発現量を明らかにする。 (2)(1)の解析結果から、補体成分C4dの既存モノクロナル抗体の病態弁別能力(感受性・特異性)に及ぼす影響を解析する。 (3)(2)の結果により、既存抗体からバイオマーカー候補抗体を確立する。
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