研究課題
23年度に課題して残されたFACS-mQにおける検出感度の向上法についての検討を行った。発現量の少ない抗原に対する抗体を使用する場合、1)抗体を蛍光色素で直接標識するのではななく1次抗体に引き続き蛍光標識した2次抗体を使用すること、2)抗体反応液をCan Get Signal Immunostainに変更すること、3)蛍光色素を従来のFluoresceinやR-PEに変えてDyLightに変更すること、などにより、発現量の少ない細胞内抗原をターゲットにした場合でもFACSによって細胞の分別採取が十分可能なレベルまでシグナル/ノイズ比を改善することに成功した。また、細胞の蛍光標識の時間も従来の12時間から4時間まで短縮した。この結果、ステップが増えるにも関わらず、蛍光標識中のRNAの分解も最小限に抑えられ、定量的RT-PCRでの解析では細胞標識前前後でのRNAの有意な減少は認めなかった。当方法を使用したテストケースとしてラット甲状腺細胞株FRTL-5を使用してFACS-mQによる解析を試みた。FRTL-5細胞は甲状腺の分化因子であるサイログロブリンを発現する。抗サイログロブリン抗体によるFlow CytometryではFRTL-5はサイログロブリンの発現の程度によって高発現群と低発現群に分かれる。両群をFACSで分別採取し、幹細胞マーカーのmRNAを計測すると、サイログロブリン低発現群で幹細胞マーカーの発現が高いことが分かった。すなわち、FRTL-5の中には未分化で幹細胞様の細胞が紛れているということになる。このように、実際にFACS-mQを使用して細胞集団のさまざまな情報を得ることが可能であることが証明された。今後は臨床検体を使用した解析に移るが、甲状腺組織内の幼若な細胞成分を検出するためのマーカー遺伝子の解析を試み、候補としてN-Cadherinを同定した。
2: おおむね順調に進展している
23年度に課題として残されたFACS-mQの感度向上についての問題を解決できた。また、細胞株を使用してFACS-mQによってデータを取ることに成功した。甲状腺内の幼若な細胞成分を検出するための候補遺伝子ので同定に成功した。
FACS-mQのプロトコールがほぼ確立したため、今後は臨床検体を用いた検討を推進する。1.ヒト正常甲状腺内における幼若な濾胞上皮細胞の検出ヒト甲状腺内には通常観察される濾胞上皮細胞以外に、濾胞上皮細胞の分化、増殖をコントロールしている幼若な細胞成分が存在するのではないかと考えられている。24年度までの検討で、そのような細胞成分を検出するためのマーカーとしてN-Cadherinを同定した。バセドウ病で手術摘出された標本を使用し、N-CadherinをターゲットとしたFACS-mQにより、目的の細胞の存在の有無の確認と採取が可能な場合は遺伝子発現プロフィールを作成することによる性質の同定を試みる。2.甲状腺腫瘍における癌幹細胞の同定甲状腺腫瘍の手術標本を使用してサイログロブリンとTTF-1をターゲットとして蛍光標識する。この2重染色によって染色程度の異なる細胞群を検出、mRNAを解析して癌幹細胞の同定を試みる。
該当なし
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