研究課題
脳磁図を用いて記憶機能の臨床検査法を開発することを目的に、大脳皮質および海馬から記憶関連脳磁界反応を記録する方法を検討した。被験者の前の画面に、顔、文字、パターン、の画像を各50枚ずつ順に呈示し、5分後に既出と未出を半々に混ぜて呈示し、既出か否かボタン押しで答える課題時に脳磁界測定を行った。大脳皮質の磁界反応は、ベータ帯域や低ガンマ帯域の脱同期が下前頭葉と下頭頂小葉に認められ、側方優位性が顔は右に、言語は左にそれぞれ認められた。一方、海馬からの磁界反応については、海馬の位置が側頭葉の裏側に位置し頭皮から距離があるため磁場反応自体が弱いか測定限界以下の可能性も考えられたが、空間フィルターを用い、測定時間を1000ミリ秒と長くすることで海馬からの磁場変動を記録できた。さらに左右の海馬の各部位に仮想センサーをおいて磁場強度を推定すると、言語課題の際には左海馬の高域ガンマ活動、パターン画では右海馬のシータ領域の活動と高域ガンマ活動の両方が記録でき、側方性についても機能を反映した結果を示した。臨床で発症早期の認知症への応用をめざし、課題の難易度を検討した。検査直前に被験者に三語を口頭で覚えさせ、5分後より順に呈示した単語が覚えた言葉か否かを答えさせたところ、若年被験者に比し高齢被験者で海馬の脳磁界反応を認めた。下前頭葉あるいは下頭頂小葉を記憶課題提示の前に磁気刺激を行い、記憶時の脳活動変化も検討したが特に有意な変化は認めなかった。記憶機能に対する磁気刺激の改善効果は今後の検討課題と考えた。以上、今回行った記憶検査用の三種類の課題は、記憶時に活動する脳部位に課題に対応した機能局在を明らかにでき、大脳皮質及び海馬における脳磁場変化として定量的に計測が可能である。今後精度を上げることで臨床応用し軽度認知障害の早期発見や、治療効果の判定に利用できる臨床検査法になると考えられた。
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